薬物療法認定薬剤師とは

日本人の死因として最も多い「がん」。そんながんの治療の研究がどんどん進み、薬物療法に関してもより専門的で難しく深い知識や経験を持った薬剤師の必要性が高まりました。そこで生まれたのが「がん薬物療法認定薬剤師」の制度です。

一般社団法人日本病院薬剤師会が主催している専門薬剤師制度で、平成27年3月1日時点での認定者は、全国で857名います。そのうち、資格更新者が449名。新しく認定されたのは408名になっています。

がん疫学に関する深い知識を有し、がんの診断や病気分類、研究や抗がん剤の薬理作用などを理解。麻酔薬オピオイドの効果と副作用とそれについての対処法からカウンセリングまで。がんの薬物療法全体に関わる「がん薬物療法の専門家」としての役割が求められます。

治療の計画や薬の効果・副作用を服薬指導で述べたり、投与量をチェックしたりする「管理」もがん薬物療法認定薬剤師の役割であり、仕事です。

がん薬物療法認定薬剤師に必要な知識や技術

がん薬物療法認定薬剤師に求められる知識は、勿論ですががんという病気全般に関する知識です。がんの治療に使われる薬物にはどんなものがあるのか、その効果や副作用・対処法とはどんなものなのかを頭にインプットしていつでも取り出せる状態にしていなければいけません。

また、そういったがんや薬物に対しての知識だけでなく、患者さんひとりひとりと向き合って患者さんから情報を引き出していく人との関わり合いの力というのも必要になります。がん薬物療法認定薬剤師としての仕事を果たしていくには、知識とコミュニケーション、その二つが大切です。

それだけではなく、グローバルな視野を持って常に最新の情報を収集して、分析。抗がん剤についての正しい知識を他の病院スタッフに提供して共有。いつでも、いつまでも学ぶことを大切にする姿勢が求められます。

がん薬物療法認定薬剤師になるには

申請資格

  • 日本の薬剤師免許を持つ薬剤師であること
  • 薬剤師としての実務経験が5年以上あり、日本病院薬剤師会の会員であること。(別の団体の会員でもいい)
  • 日病薬病院薬学認定薬剤師であること(日本医療薬学会認定薬剤師であれば満たすこともできる)
  • 日本病院薬剤師会が認定する研修施設で、薬剤管理指導業務、抗がん薬注射剤混合調製、薬物血中濃度のモニタリング、緩和ケアなどの実技研修を3ヶ月以上行っていること。あるいは、研修施設にて3年以上のがん薬物療法に継続して従事していること。
  • 日本病院薬剤師会が認めるがん領域の講習会や、他の学会の主催しているがん領域の講習会などを40時間、20単位以上履修していること。そのうち、日本病院薬剤師会主催のがん専門薬剤師に関する講習会を12時間、6単位以上を取得していなければならない。
  • がん患者に対する薬剤管理指導の実績を50症例以上有していること
  • 病院長や施設長などからの推薦があること
  • 日本病院薬剤師会が行っているがん薬物療法認定薬剤師認定試験に合格すること

以上が、がん薬物療法認定薬剤師認定申請を行うために必要な資格です。がんという非常に難しく、人命にも直接関わってくるような領域に関係することのため、条件はかなり厳しくなっていますね。

試験について

がん薬物療法認定薬剤師の試験の難易度は、とてもハードです。講習会の内容を頭に入れていればそれで済むというものでもなく、非常に高度な学習を強いられます。認定薬剤師制度の中でもかなり難易度が高い部類に入る試験になっています。

例年、合格率は50%あるかないかといったところ。万全の状態で試験に臨んだとしても、二人にひとりしか合格できないという高いハードルがあります。試験の問題については、「組み合わせを選ぶ問題」が多く出題される傾向にあるようです。

問題は全部で50問。全て選択式で、選択肢は5択。出題内容がかなり専門的なもののため、ひとつひとつの分野・段階で深い知識を頭の中に入れておかないと、「選択式なのに解答ができない!」という事態に陥ることも十分ありえます。

がん薬物療法認定薬剤師の活躍の場

がん薬物療法認定薬剤師の活躍の場は、がん治療を行っている病院や施設。そこで、「がん薬物治療のエキスパート」としての立場で活躍することになります。医師や看護師も有していないような知識や情報を有し、必要とあらばそれを共有する役割を担っているため、より頼られる存在としてやりがいのある立場です。