病院薬剤師って忙しそうなイメージがあるけど実際はどうなの?今回はそんな疑問にお答えするために病院薬剤師の仕事の実態に迫ってみたいと思います。

病院薬剤師の勤務状況

まず結論から申し上げますと、病院薬剤師の仕事はやっぱり忙しいです!

最近のチーム医療推進の流れの中で病院薬剤師に求められる役割はますます増えており、調剤などの従来型対物業務から、病棟業務などの対人業務へと仕事内容が拡大しつつあります。

加えて病院は一般に経営状態が厳しく、4割が赤字になっているともいわれています。そのため、多くの病院では人件費を切り詰めたギリギリの状態での運営を迫られています。

中でも薬剤部はそれほど収益性のある部門でもないため、薬剤師の採用人数は医師や看護師などと比べて削減の対象になりやすいと言えます。

さらに昨今はどこも慢性的に薬剤不足が続いているため、大学病院などの人気がある総合病院を除き、多くの病院では常に薬剤師が不足しています。

チェーン型のドラッグストアや調剤薬局では余裕のある店舗が、人手不足の店舗に応援を出すこともできますが、通常、病院ではそうした横のつながりもありません。

また、薬剤師は女性の比率が多いため、必然的に結婚や産休などによる欠員が出やすい状況にあります。忙しい時期に産休などによる欠員が出ると、残ったスタッフで穴を埋めなければならないため、危機的な状況に陥ることもあります。

たとえば、私の知り合いの薬剤師は病院でDI業務を担当していましたが、3人しかいないスタッフのうちの1人が産休に入ったため、しばらくの間、週に1度しか休みが取れなくなったと嘆いていました。

このように病院薬剤師は自然と多忙になりやすい状況にあるため、就職を考えられている方はそれなりの覚悟が必要と言えるでしょう。

特に忙しい仕事の内容

病院薬剤師の仕事内容は多岐に渡りますが、ここでは現場で働く病院薬剤師から聞いた、特に忙しい感じる仕事内容についてご紹介したいと思います。

入院患者さんの点滴薬の準備

病院薬剤師の業務の中で一、二を争う忙しさとされるのがこの朝の点滴薬の準備です。

病棟では多いところでは8割以上の患者さんが点滴や中心静脈栄養による治療を受けており、これらを毎朝確実に準備することは薬剤部に課された大きな使命です。

膨大な数の患者さんの点滴を短時間で準備することの大変さは想像に難くないでしょう。

また、同時にこれらの業務はミスが許されないものです。患者さんの名前と、輸液や混注する薬品の種類を正確に照合して調製しなければならないため非常に神経を使います。

さらに、調製が済んだ後は、膨大な数の点滴液を薬剤部から病棟まで運ぶために院内を駆け回ることになります。

こうした朝の点滴準備はまさに戦場の様相を呈しており、多忙を極めるひと時と言えるでしょう。

午前・夕方の処方箋調剤

朝の点滴準備が終わり、ひと段落ついたと思った矢先に、今度は午前中の処方箋集中攻撃が始まります。

病院によっては1日に1000枚を超える院内処方箋が発行されるところもあり、オーダリングシステムを通じて山のような数の処方箋が薬剤部になだれ込んできます。

これらを効率よく短時間で処理しないといつまでたってもお昼休憩が取れなくなるため、スタッフが一致団結し、最大限の集中力を発揮して調剤に当たることになります。

また、夕方になると再び大量の処方箋が薬剤部に届きます。外科医などは手術終了後の夕方に処方箋を発行することが多いため、終業間際の時間帯になってから大量の処方箋が押し寄せてくるのです。

スタッフはみんな定時にあがりたいため、懸命に努力して調剤にあたりますが、たいていはその甲斐もなく残業になってしまいます。

特に処方箋枚数が多い月曜や金曜は残業になる確率が高くなるため、金曜の夜に飲み会やデートの予定を入れたい人にはつらい状況と言えます。今話題のプレミアムフライデーも残念ながら病院薬剤師には無縁かもしれません。

ただし、患者さんのために多少の自己犠牲を払うのは医療従事者にとっての宿命であり、病院薬剤師としてやっていくにはこうした覚悟も必要と言えます。

勉強会・研修会・学会などへの参加

病院薬剤が忙しいとされる理由の一つに、勉強会や学会などの各種会合に参加しなければならないことがあります。

調剤薬局の薬剤師も業務終了後に勉強会などに参加することはありますが、病院薬剤師の頻度はその比ではありません。学会、勉強会、研修会、各種カンファレンスなど参加しなければならない会合が数多くあり、みな忙しい業務の合間を縫って出席します。

病院薬剤師は医師や看護師などの他職種と肩を並べながらチーム医療に取り組まないとならないため、常に最先端のスキルを身に着けておく必要があり、こうした会合への参加は必須であると言えます。

特に学会は休日に参加することがほとんどです。遠方で開催されることも多いため新幹線や飛行機に乗って現地まで出向くことも多々あります。中には週2日の休日のうちの1日はほぼ学会で埋まっており、実質的には週1日しか休めないという人もいるほどです。

まとめ

ご覧いただいたように、病院薬剤師は調剤薬局などの薬剤師と比較すると総じて多忙であると言えます。

「残業は嫌!」「週休2日は必須条件!」などと考えている方にとっては病院薬剤師の仕事はハードルが高いと言えるでしょう。

しかし、こうした多忙な日々に耐えながら、着実に業務をこなしていくことで薬剤師として大きく成長できることも事実です。

また、新人のうちは慣れない環境のために特に忙しいと感じることもありますが、経験を積むうちに次第にコツを掴み要領よく仕事をこなせるようにもなってきます。

スタッフが一丸となって多忙な業務に取り組むことで得られる特別な絆や連帯感も病院薬剤師の大きな魅力の一つと言えるでしょう。

人は困難や苦労を乗り越えることで、初めて立派に成長することができます。多忙な日々を乗り越えて薬剤師としてのステップアップを図りたい!という強い決意を持たれる方は是非、病院薬剤師の仕事にチャレンジされてはいかがでしょうか!?