忙しい調剤薬局って本当に大変ですよね。まさに「激務」という言葉がしっくりきます。

朝から昼過ぎまでずっと息をつく間もないくらい調剤業務をこなし、休憩もそこそこに薬歴作成。

その間にも患者さんは途切れず、気がついたら受付終了時間。あわてて薬剤を発注。当日中に薬歴記入をしてしまいたいけれど残業をさせてもらえず次の日に持ち越し。

家に帰ってもクタクタで何もできす、眠っている間も仕事の夢ばかり見て寝た気がしない。

そんな経験をされている方は、少なからずいると思います。

そこで、何が原因でそんな激務が生じているのか、それをどうやって打開していけばいいのかを検討していきたいと思います。

激務の原因 その1「処方せん枚数に対して薬剤師数が少ない」

一部の科の処方せんを除き、一日の処方せん枚数40枚に付き一人薬剤師を配置しなければならないことになっています。

しかしこの必要薬剤師数は「前年の」一日平均取扱処方せん数で決まるので、必ずしも現状と一致していない可能性があります

例えば、近隣に医療モールや大きな総合病院が設立された場合、前年に比べて処方せん枚数が著しく増える可能性があります。そのような場合に人員補給がないと、薬剤師一人あたりの負担が増大することになります。

また、季節によって患者数に偏りがある場合、例えば内科や小児科のように冬場に患者数が多くなる診療科の門前薬局の場合、ピーク時には夏場の倍の処方せんを受け付けることもあるかもしれません。

いずれの場合も処方せん枚数が予想を超えて大幅に増加するために薬剤師の負担が増大するわけですが、薬剤師の補充が行われないと勤務している薬剤師が激務にさらされることになります。

ところで、処方せん40枚につき薬剤師一人というのはどの程度の忙しさなのでしょうか?

これは8時間労働で換算した場合、処方せん1枚を平均12分でこなさなければならない事になります。調剤・監査・服薬指導・薬歴記入、必要に応じて疑義照会して12分って・・・すごく大変ですよね。

経験的には一人あたりの処方せん枚数が25枚程度だと、他の業務をこなしても残業なしで業務を終えることができます。

30枚になると、他の業務を片付けて何とかギリギリ残業なし、今日は忙しかったなぁと思うようになります。

35枚を超えると、発注などの業務は必要最低限しかできなくなります。薬歴も記入しきれず、残業したり次の日以降に持ち越しになります。

もちろん日によって処方せん枚数が違うので、必ずしも毎日大変というわけではないでしょう。

しかし処方せん枚数に対して薬剤師の人数に余裕がない場合、働く薬剤師のストレスは日々増大することとなります。

解決策としては、シフトの見直しや人員の確保などが挙げられます。

過去の処方せん発行枚数の傾向や近隣の病院の曜日ごとの診療科目・医院の営業時間にあわせてシフトを見直し、忙しい日に合わせて従業員の勤務時間を調節するのです。

それでも残業が生じるのであれば、残業時間も加味したシフトを組む必要があるかもしれません。もちろん時間数や曜日に制限のあるパート従業員もいるでしょうから、各従業員とのすり合わせも必要です。

シフトはすでに見直しているし、もうどうにもならない・・・という状態ならば人員の確保を考慮する必要があります。

大きなチェーン薬局ならば、他店舗への応援要請を検討することもできるでしょう。

しかし応援要請ができない中小規模薬局の場合、薬剤師を新たに雇うことを考えなくてはなりません。

地方で薬剤師人口が少ない、あるいは忙しい時期が限定的であることがわかっているならば、派遣薬剤師を雇うということも選択肢の一つとなります。

もっとも、薬剤師を雇用する側の経営者が現場の状況を正確に把握しているとは限りません。

薬剤師のストレスは過誤につながり、ひいては患者さんに重大な不利益につながります。窮状を経営者にマメに伝えることも重要です。

激務の原因 その2「自分の担当業務が多い」

処方せん枚数に対する人員は十分確保できているけれど、忙しい。

しかも忙しい人と忙しくない人がいる気がする、という場合には、業務の配分に問題があるのかもしれません。

調剤薬局では、薬剤師の誰もが調剤業務を行います。しかし、発注納品などの在庫管理や在宅医療に関わる業務は、担当者が決まっていることが多いように思います。

もっとも、業務の担当制は悪いことではないと思います。むしろ担当制は良いことだと思います。発注者が決まっていれば発注ミスは少なくなりますし在庫管理もしやすくなります。

また在宅訪問では、訪問する薬剤師が毎回一緒のほうが患者さんとの信頼関係も築きやすいでしょう。

しかし一人の薬剤師が担当する業務が多ければ多いほど、不公平感が生まれます。どんなに優秀な薬剤師であっても担当業務が多ければ疲れてしまいます。

そこで、発注や在宅医療を担当している薬剤師の負担が過剰にならないように、通常の調剤業務を減らすよう業務の配分をする必要があります。

具体的には、薬歴がたまらないように業務を配分するのが良いでしょう。というのは、残業原因の多くは未記入の薬歴の蓄積にあるからです。

例えば発注に関しては、発注時間の30分~1時間くらい前から担当者には薬歴記入に集中してもらい、薬歴記入及び発注業務終了後に通常の業務に戻ってもらうようにします。

また、在宅訪問のある日は担当者にはピッキングなどをメインに行ってもらい、未記入の薬歴が蓄積しないようにします。

ただし、上記はあくまで複数人体制の薬局での話です。

一人薬剤師の場合は、これらの業務を一人でこなさなければなりません。

そこで、発注する曜日を決めたり在宅訪問する日は他の業務を極力減らすようにします。

発注する日を減らすのは慣れるまでは大変ですし不安かもしれません。しかし、過去3ヶ月程度の出庫履歴をもとに発注点を設定すれば、在庫切れが発生することはあまりありません。

また、発注回数が減ると当然のことながら納品回数も減るため、その点でも負担を減らすことができます。

激務の原因 その3「24時間体制で患者対応をしなくてはならない」

管理薬剤師は、患者さんからの緊急連絡に対応するために会社から携帯電話を渡されていることも多いと思います。

また、近年設立された「かかりつけ薬剤師」制度では、患者対応を休日夜間にも行うこととされています。

もちろん患者さんにとっては非常に良い制度だと思うのですが、薬剤師としては正直つらい制度だと思っている人も多いと思います。

確かに休日夜間の対応に関しては、スタッフの中で当番制をとることもできます。

しかし常に電話機を携帯し対応できるようにするのは気が休まらず落ち着かないものです。激務と言うほどではないかもしれませんが、ストレスの原因にはなります。

ではどうすればよいのでしょう。

電話問い合わせで多いのは、副作用に関すること、飲み忘れ時の対応、飲み合わせの確認、以前もらった薬を飲んでよいかどうかといった内容です。

時には本当に急を要する内容の問い合わせもありますが、多くは服薬指導をしっかり行い患者さんに薬について理解してもらうことにより減らすことができる内容だと考えられます。

また、服薬指導時に漠然と「何か気になることがあったらご連絡下さい」と伝えるのではなく「○○な症状がある場合には副作用の初期症状の可能性があるので医療機関を受診して下さい」「☓☓な場合は薬の追加変更が必要となるかもしれません。

薬局では処方せんがないと薬は出せないので必ず医療機関を受診して下さい」という感じで医療機関を受診しなくてはならない場合をしっかり伝えておくのも良いと思います。

もう激務に耐えられない!そんなときは転職を考えよう

とはいえ、人員補給もままならないしシフトも変えられない(そもそもそのような権限がない)、業務も減らせない、休日夜間も気が休まらないという状態が続くと、ストレスが増大し仕事自体がイヤになってしまいますよね。

「やはり自分は調剤薬局の仕事に向いていないかもしれない」あるいは「薬局・会社の教育・管理体制に問題があるのかもしれない」と悩む方もいるでしょう。

そういった場合には、転職という選択肢もあります。

調剤に関わりたいという気持ちがあるならば、他の調剤薬局に、OTC販売にも興味があるならドラッグストアに転職するのも良いでしょう。

その時には年間休日数や休みの曜日、常勤の薬剤師数やヘルプ体制、応需する科目や一日の処方せん枚数及び内容をチェックするのを忘れないようにしましょう。

一方、しばらく調剤から離れたいという方はメーカーや医薬品卸に転職するのも良いと思います。完全週休二日制のところが多いですし、部署によっては残業が殆どないというところもあります。

いずれも調剤薬局での経験が無駄になるということはありません。

激務から開放されてさらなるキャリアアップを目指すなら、他の業種も含めた広い視野で転職先を探しましょう。