2016年に設立された「かかりつけ薬剤師」制度を意識して就職活動をしている方、多いのではないでしょうか?

しかし「やりがいがありそうだけど、大変そう。」そんなふうに思っている方もいると思います。

そこで、「かかりつけ薬剤師」制度と、それを意識した就職活動について考えてみたいと思います。

かかりつけ薬剤師制度って何?

かかりつけ薬剤師制度の概要

かかりつけ薬剤師制度とは、2016年に新設された制度です。簡単に言えば、患者さんがお気に入りの薬剤師を指名できる制度です。

担当となった薬剤師が、服薬状況の管理・飲み合わせの確認・健康やサプリメントなどに関する相談を引き受け、必要に応じて残薬の整理・医師への情報提供を行います。

さらに休日夜間であっても24時間電話相談を受ける体制を整え、在宅での服薬指導も依頼があれば行います。

どんな人がかかりつけ薬剤師になれるの?

かかりつけ薬剤師になるためには、保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験が必要です。したがって、調剤薬局未経験の薬剤師がいきなりかかりつけ薬剤師になることはできません。

また、所属する薬局に週32時間以上勤務していることが必要です。そのため、勤務時間が短い場合はかかりつけ薬剤師になれません。

さらに、どんなに経験が豊富な薬剤師であっても、当該薬局に6ヶ月以上在籍していなければかかりつけ薬剤師になることはできません。

その他、かかりつけ薬剤師になるためには、研修認定薬剤師として認定を受けなければなりません。

そして薬剤師として地域活動に取り組む必要もあります。地域活動の例としては、自治体が行う健康相談イベントに参加したりすることなどがあげられます。

今までの制度との違いは?

では、既存の制度との違いは何でしょう?

実は、ほとんど変わりがないのです。大きな違いは、かかりつけ薬剤師の勤務表を交付することくらいなのです。

そもそも、服薬状況の管理・飲み合わせの確認・健康やサプリメントなどに関する相談・残薬の整理・医師への情報提供は、かかりつけ薬剤師でなくても行います。在宅医療を行っている薬局では、在宅での服薬指導も行っています。

また、基準調剤加算を算定している薬局では、全ての患者さんに対して24時間相談に応じることが求められています。

かかりつけ薬剤師になるメリット・デメリットは?

では、かかりつけ薬剤師になるメリットは何でしょうか?

まず、担当制となることで患者さんとの信頼関係が構築されやすくなります。患者さんの状況が把握しやすくなりしっかり服薬指導をすることができるようになりますし、薬歴の内容も充実させることができます。

また、かかりつけ薬剤師になるためには継続的に研修に参加して地域活動にも取り組む必要があります。ハードルの高い条件ですが、知識を蓄積して地域の医療に貢献することは、薬剤師としてのキャリアを積むことにもなります。これも大きなメリットといえるでしょう。

さらに、必要に応じて医師に情報提供を行うことになるので、医薬連携を実感する機会が増えると考えられます。

なお企業によっては、かかりつけ薬剤師であることに対して手当がつくこともあるようです。

一方で、デメリットは何でしょうか?

だれもが気になるのは「24時間対応」だと思います。しかし、夜間・休日はかかりつけ薬剤師以外の薬剤師が対応することも認められています。したがって、必ずしも毎日対応するわけではありません。

また、研修認定薬剤師の資格を取得し維持するのも大変です。研修認定薬剤師は一度取得しても3年毎に更新が必要ですし、継続的に一定数の単位を取得しなければなりません。さらに、研修には実費が必要なものもあります。

かかりつけ薬剤師を意識した調剤薬局の求人選びのポイント

腰を据えて働きたいなら中小規模薬局

異動の可能性がある大手チェーン薬局では、どんなにキャリアがあっても異動のたびにかかりつけ薬剤師になれない期間が生じます。

したがって、かかりつけ薬剤師として腰を据えて働きたいのならば、異動の少ない中小規模の薬局へ就職することがおすすめです。

中小規模の薬局は地域密着型の店舗であることが多いので、その点でもおすすめです。

休日夜間の対応を確認

かかりつけ薬剤師として働く場合、休日夜間の対応についても確認する必要があります。

多くの薬局では業務用の携帯電話が用意されており、薬剤師間で交代で対応するようになっているようです。しかし、企業によって規定が異なりますので、事前に確認するのが良いでしょう。

また、たとえ交代で対応することになっていても、薬剤師数が少ないと頻繁に当番が回ってくることになります。私の経験では、休日夜間の電話はそれほど件数は多くありません。しかし、24時間拘束されるのは精神的に非常につらいものです。

無理が続くと、仕事を続けることがつらくなってきます。

そのため、かかりつけ薬剤師を目指すならば、休日夜間の対応についてもしっかりチェックしておきましょう。

かかりつけ薬剤師になるためのサポートがあるところを狙いましょう

かかりつけ薬剤師がいると診療報酬が増えることになるので、薬剤師を雇う企業にとってもメリットがあります。

そのため、研修認定薬剤師の資格取得・維持に必要な研修の費用を負担してくれたり研修を業務とみなしてくれたりする企業もあるようです。こういった制度がある企業に就職すれば、それほどストレスなく研修を受けることができます。

また、地域活動の参加も一個人ではなかなか難しいので、自治体のイベントやエリアの薬剤師会に積極的に参加している企業に就職すると良いと思います。

就職活動時にこれらの情報を得るのは難しいかもしれませんが、面接時にかかりつけ薬剤師になるためのサポートがあるのかどうか、あるのならばどのような内容なのかを具体的に確認すると良いと思います。

まとめ

かかりつけ薬剤師制度は、本来患者さんのために設立された制度です。まだ制度が十分に浸透していないために認知度は低いですが、今後は患者さん一人ひとりにかかりつけ薬剤師がいるのが当たり前になってくるかもしれません。

これは患者さんにとっても薬剤師にとっても大きな変化といえますね。変化に対応できない薬剤師は、今後は淘汰されてしまうかもしれません。

患者さんあってのかかりつけ薬剤師です。かかりつけ薬剤師になることを目標とするのではなく、患者さんに選ばれる薬剤師を目指したいものですね。

とはいえ、保険薬剤師としてのキャリアがなければかかりつけ薬剤師にはなれません。

まずその第一歩として、調剤薬局への就職を目指してみませんか?道のりは短くありませんが、夢を実現するために最初の一歩を踏み出してみてくださいね。