偽造処方せんが問題

偽造処方箋の事例

少し古い例ですが、2012年6月18日に報道発表された奈良県の「向精神薬の偽造処方箋」が問題になっていましたね。4月24日に、カラーコピーされた複数の向精神薬の処方箋を薬局に持ち込んで、向精神薬を不正に入手した事件です。

提出された処方箋が、後からカラーコピーであったことに気がついた薬局が、奈良県の薬務課に報告しました。そこで確認したところ、それがカラーコピーだと判明したため、捜査。3つの医療機関の処方箋をコピーして偽造したと報道されていました。

そのときに処方されたのは、ベンザリン錠・アモバン錠を744錠ずつ。若い頃から、うつ病と、それに併発して発生した不眠症に悩まされていた被疑者が、医療機関から出される薬の量では足りなくなったため、処方箋をコピーして不正入手したとのことです。

向精神薬がほとんど

奈良県の事例でも向精神薬が不正入手されたとありましたが、偽造処方箋によって不正入手されるものは、ほとんどが向精神薬です。発生件数が上位の医薬品は、以下のとおり。薬剤師ならわかると思いますが、すべてが向精神薬となっています。

  • リタリン ハルシオン レキソタン
  • ベンザリン ロヒプノール レペタン
  • ソラナックス ワイパックス エリミン

リタリンは、流通の管理が以前よりも厳しくなっているため、以前よりは不正入手されにくくなりましたね。ただ、上記の医薬品についての処方箋があった場合には、まず最初に偽造処方箋を疑ったほうが良いでしょう。

疑ってかかっていれば、見逃してしまいそうな小さな違和感であっても、見逃さずに判別することができます。

偽造処方せん対策

処方箋について見るべきところ

偽造処方箋の対策については、さまざまなところが対策マニュアルや留意事項を示した書類を作成し、情報公開しています。そういったものを参考にして、処方箋についてチェックしておかなければならないポイントを押さえておきましょう。

まず、処方箋偽造は、全部偽造または一部改ざんなどによって行われます。全部偽造は、処方箋をそのままカラーコピーしたり、パソコンを利用してそっくりそのまま作ったものです。一部改ざんは、用法や用量について改ざんしたものがあります。

一部改ざんの場合は、医師による訂正印がなかったり、字体が異なっていたりと見分けやすいです。事件として発生しているのは、ほとんどがカラーコピーによるもの。どこを見れば良いのでしょうか。

まず、見た目です。元々の処方箋に「しみ」があると、その「しみ」が印刷されます。過去に似たような処方内容があった場合、そのときの処方箋と照らし合わせて「しみ」が同じ箇所についていないか確かめることによって、判別可能です。

また、用紙のサイズが異なります。医療機関の処方箋よりも大きかったり、処方箋の内容が斜めに印刷されているものについては、明らかに偽造ですね。また、医者の印影についてですが、赤色が暗かったり、裏面からの押印のインク浸透が無いといった場合もカラーコピーによる偽造になります。

また、カラーコピーのものは、紙の表面にインクがただ載せられているだけです。こすったりすると、印刷がはがれてしまうことがあります。それに比べ、押印しているものは浸透しているため、叢簡単には剥がれるものではありません。

対策として考えられるもの

偽造処方箋への対策としては、まず最初に、発生件数上位の医薬品のものの処方箋の場合は疑いの目で見ることが挙げられます。疑ってかかり、まず裏面にインクの浸透があるかどうか確認しましょう。そういったことが、薬剤師ができる対策方法です。

また、医師と連携して、医師の押印は濃くして浸透をわかりやすくする。または、裏面にも押印するなどして対策をとることも大切です。処方箋用紙に透かしを入れたり、コピーガードを入れたりすれば、より確実に偽造処方箋を防ぐことができるようになります。

まず、疑わしいところがあれば、処方箋を発行したとしている医師に疑義紹介を徹底するようにしましょう。疑わしければ疑義紹介をするまで処方してはならないと、薬剤師法でも定められています。そのとおりにするだけでも、防ぐことができます。