調剤薬局の薬剤師という職業に興味があるけれど、未経験だし自分にできるだろうか?と悩んで就職を躊躇している人もいるのではないのでしょうか?

確かに調剤薬局というのは患者さんの生命身体に関わる薬剤をあつかう場ですし、ミスの許されない職場でもあります。

しかしすべての薬剤師がベテランで完璧であるわけではありません。最初は誰でも未経験の初心者なのです。

だからといって、新卒の薬剤師と社会人経験のある薬剤師が全く同じように扱われるわけではありません。今までの社会経験に応じて求められるスキル・知識のレベルが変わってきます。

そこで「新卒の場合」「他業種から転職する場合」「調剤薬局の経験があるけれどブランクがある場合」に分けて、調剤薬局の薬剤師として就職するときに求められるスキル・知識のレベルを比較していきたいと思います。

新卒の薬剤師が調剤薬局で働く際に求められるスキル・知識のレベル

新卒の場合、実習で調剤業務を経験していても仕事としての調剤業務が未経験であることが当たり前なので、高いレベルのスキルや知識を求められることはまずありません。

もちろん最低限の薬に関する知識は必要ですが、一般名からその薬剤の効能効果、薬剤によっては相互作用や重篤な副作用がなんとなく思い浮かぶならば十分です。

「え?それだけ?完璧でなくていいの?それで患者さんに薬を出せるの?」と思われるかもしれませんね。
確かに薬剤に対する知識が豊富な方が仕事はしやすいかもしれません。しかし、知識に頼り思い込みで業務を行ってしまうことの方が危険です。

薬剤には必ず添付文書が添えられているので、不明点があったら添付文書で確認すれば大丈夫です。添付文書だけでは不十分ならば、メーカーの問い合わせ先に電話で確認をします。

薬剤の情報は頻繁に更新されるので、知識や記憶に頼らず最新の情報を確認するほうが患者さんの安全に資すると言えます。

また、実習では様々な調剤業務を経験しますが、軟膏の混合・散剤の計量混合・錠剤の粉砕・散剤をヘラでならす作業などは現場で経験を積まなければなかなか上達しないものです。

さらに薬局ごとに賦形や分包に関するルールが異なるので、そういった細かい内規を覚える必要もあります。

保険に関しても知識がないのが当たり前なので、徐々に覚えていくことになります。

受け入れる調剤薬局側も新卒であることはわかっているので、最初のうちは先輩薬剤師がつきっきりで指導してくれるので心配はありません。

他業種から調剤薬局に転職する薬剤師に求められるスキル・知識のレベル

前職が病院薬剤師などの場合

前職が病院薬剤師など調剤にかかわる職種の場合、調剤スキルや薬剤・疾患に関する知識などは、経験者と同程度もしくはそれ以上の高いレベルのものが求められます。
特にがんセンターや小児専門病院など専門性の高い病院に勤務していた場合には、その知識を非常に期待されることもあります。

一方で保険に関しては知識がないのが当たり前なので、新卒同様少しずつ覚えていけば大丈夫です。
なお、保険請求についてしっかり勉強したいならば、調剤事務の資格が取れる通信講座の受講をおすすめします。資格を取らなくても、教科書やDVDをみるだけで非常に勉強になります。

前職が調剤にかかわらない業種の場合

どのような職場でどのような仕事をしてきたかにもよりますが、求められるスキル・知識は新卒薬剤師と同様で高いレベルのものを要求されることはあまりありません。
新卒同様、最初のうちは先輩薬剤師がつきっきりで指導してくれます。

しかし新卒と違って社会人としての経験がある以上、最低限の接遇マナーは求められます。
そこが新卒薬剤師との大きな違いと言えます。

調剤経験があるけれどブランクがある薬剤師に求められるスキル・知識のレベル

調剤経験の長さやブランク期間によりますが、調剤スキルや疾患に関する知識などは現職の薬剤師と同程度のものが求められます。

確かにブランクが長いと不安になるものですが、調剤スキルは実際に業務に復帰すればすぐにカンが戻るものです。

一方で、薬剤(特に新薬)に関する知識や保険に関する知識は、ブランクがあれば「知らないことがあるのが当たり前」なのでそれほどシビアに要求されることはありません。

毎年のように大型新薬が発売されたり診療報酬改定も頻繁に行われるので、知らない部分はその都度補えば大丈夫です。

だからといってそれに甘えて勉強を怠ることは許されないのでご承知下さい。

なお、ブランクにかかわらず、一人薬剤師の経験がある薬剤師は重宝される傾向があるように思います。

と言うのは、一人薬剤師は調剤業務のみならず在庫管理・クレーム対応・管理薬剤師業務など全ての業務を一人でこなすわけですから、「なんでもできる薬剤師」として非常に期待されるからです。

まとめ

以上、いくつかのパターンに分けて調剤薬局の薬剤師として就職するときに求められるスキル・知識のレベルを比較して来ましたが、いかがでしたか?

就職前にスキルや知識のレベルアップを図りたいという方は、各地域の薬剤師会で薬剤師の再就職支援講座が開設されているので参加してみるもの良いと思います。

また本文中でも述べましたが、保険請求についてしっかり勉強したいならば、調剤事務の資格が取れる通信講座の受講をおすすめします。

なお、調剤経験があると次の転職が有利になると言われています。

調剤薬局薬剤師の仕事というのは薬のエンドユーザーである患者さんに薬を直接渡す仕事ですし、一度調剤スキルを会得すれば大抵どこの薬局でも応用が効くものです。

しかもこれらのスキルはマニュアルを読んで得られるものではありません。調剤の現場で経験を積まなければ得られないものなのです。

少しでも「調剤薬局での仕事をやってみようかな」と思ったのならば、調剤薬局を就職先の候補の一つとして考慮してみてはどうでしょう?

調剤薬局での経験は、あなたにとって決して無駄にはならないと思いますよ。