妊婦・授乳婦薬物療法専門薬剤師とは

妊婦・授乳婦薬物療法専門薬剤師は一般社団法人日本病院薬剤師会によって平成21年度から運用・実施されている専門資格制度。平成26年度の時点では108名の認定者がいます。

妊婦や授乳婦にとっては、自分が飲んでいる薬・これから飲むことになる薬が、赤ちゃんに対して悪影響を与えるものではないかどうかというのが気になりますよね。そういった薬の胎児や乳児に与える悪影響などに関して専門的な知識を有し、妊婦や授乳婦に対して適切な薬物療法を行うことができる薬剤師を育てる目的があります。

妊婦・授乳婦薬物療法専門薬剤師の役割は、妊婦や授乳婦・赤ちゃんの安全を担うというものです。

妊婦・授乳婦薬物療法専門薬剤師に必要な知識や技術

妊婦・授乳婦薬物療法専門薬剤師に必要になるのは、医薬品の胎児や乳幼児に与える影響について。どのようなリスクがあるのか、そのリスクはどの程度なのか。どの程度のリスクのあるものなら処方しても問題がないのかなどについての専門的な知識が必要です。

OTCの成分に関しても、妊婦や授乳婦・赤ちゃんにとって悪影響を与えかねないものがある。OTCの成分に関しての知識も必要になります。さらに、そういったことをわかりやすく説明することができる服薬指導の技術も必要です。

妊婦や授乳婦への医薬品の効果や安全性は、根拠になるデータがかなり少ない。そのため、仕事は困難を極めます。データ収集なども行いながらも、データが無くても経験を活かした投薬をしなくてはいけないので、確固たる技術と実務経験が必要ですよ。

妊婦・授乳婦専門薬剤師になるには

申請条件

  • 妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師である
  • 日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本先天異常学会のいずれかの会員である
  • 日本医療薬学会、日本薬学会、日本薬剤師会学術大会、上記関連学会、関連している国際学会や全国レベルの学会、日本病院薬剤師会ブロック学術大会で、妊婦・授乳婦領域に関しての学会発表を3回以上行い、うち1回以上は発表者であること
  • 複数査読制の国際的・全国的学会誌・学術雑誌に妊婦・授乳婦領域の学術論文を2編以上著し、そのうちの少なくとも1編は筆頭著者であること
  • 病院長や施設庁の推薦があること
  • 日本病院薬剤師会が行っている妊婦・授乳婦専門薬剤師認定試験に合格すること

試験について

受験をするには、受験料として税込みで1万800円を支払う必要があります。

試験の出題範囲に関しては、日本病院薬剤師会のホームページにて確認することができますよ。一部だけ紹介しておくと、例えば次のようなものがあげられます。

  • 妊婦や授乳婦と周産期医療に関しての知識
  • 妊婦や出産に関しての知識
  • 妊娠
  • 出産の過程や妊婦の生理学的な変化、ホルモンの働きについて説明する
  • 授乳婦の知識
  • 胎児
  • 新生児の知識
  • 妊娠中に合併する疾患について
  • 生命倫理と法規制

このように、基礎的な知識から「説明する」というようなマニアックな問題まで幅広く出題されますが、試験野難易度はそれほど高くはありません。認定薬剤師の認定を受けた人であれば、さほど問題にはならないでしょう。

出題範囲が掲載されている資料に、参考資料についても掲載されています。例えば次のようなものです。

  • 平成○○年度妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師講習会テキスト
  • 平成○○年度秋 妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師講習会テキスト

このように、講習会をしっかり受けてそこで使われるテキストについてしっかりと対策・勉強を立てていれば試験は問題なくパスできるでしょう。他の参考資料に関しても、ほとんどが講習会のテキストです。添付文書やインタビューフォームにも目を通しておくと、なおバッチリですね。

適正

真実を追究する意欲が強い人が、向いています。妊婦・授乳婦薬物療法に関してはまだまだ確立できていない領域。その中から正しいことを導き出し、患者さんに不都合が出ないようにする。そういうことをしたいという意欲が強い人にはとても向いているでしょう。

子供が好きだという人にも、向いています。

妊婦・授乳婦薬物療法専門薬剤師の活躍の場

妊婦・授乳婦薬物療法専門薬剤師は産婦人科のある病院や診療所、小児科のある病院や診療所などで活躍することができます。特に前者での需要が強いですね。

専門薬剤師ということで、チーム医療の中核を担うことにもなり、それなりの地位と手当てが期待できます。