派遣というのは、派遣会社と契約をしたのち、その会社(派遣元)から派遣されて別の会社(派遣先)で働くという働き方です。

雇用責任は派遣元にあり、指揮命令権は派遣先にあるという特殊な労働契約のため、派遣ならではのトラブルもあります。

これから薬剤師として派遣の仕事につきたいと思っているあなたに、「よくあるトラブル」や「滅多にないけど怖いトラブル」をご紹介します。

派遣薬剤師のよくあるトラブル

現場の人間関係がどうしてもうまくいかない・・・

えっ、これって派遣に限らないのでは?と思われたかもしれません。そう、人間関係のトラブルはどこの世界でもつきものです。

しかし、うまくいかない原因が、高時給・定時終業という好条件で働いている派遣薬剤師へのやっかみであることも多いのです。

時給が高いと言われて仲間はずれに

「あなたって時給***円なんですってね。」
「正社員の倍以上の時給なのに、あなたはそれに見合った仕事をしていないんじゃない?」

派遣先が派遣元に支払う派遣料金のうち、だいたい30%が派遣元の会社に、残り70%が派遣薬剤師の手元に入ります。

つまり、あなたが派遣薬剤師として働くときの時給が3500円だと、派遣先は派遣元に時間単価5000円を支払っていることになりますね。

しかし派遣先では、派遣元が派遣薬剤師にいくら払っているかはわからないので、あなたの時給が5000円であるように思われがちです。

ただでさえ時給が高いと評判の派遣薬剤師ですが、周囲には、それ以上の額をもらっていると思われているかもしれません。

定時に帰ろうとすると白い目で見られる

「いいわね、派遣の人は時間通りに終われて。」

高時給の派遣薬剤師は、時間外手当も高額となるため、残業を依頼されることはあまりありません。

そもそも残業の有無は契約にもりこまれており、無しの場合、派遣薬剤師としては契約事項を守らなければなりません。

定時で終わることができるよう仕事をこなしているのですから、それに対しあれこれ言われてもつらいところです。

なかには、こうした人間関係の悪化を避けるために、いったんタイムカードを押してからそのまま仕事を続ける(いわゆるサービス残業)という人もいるようですが、これっておかしいですよね。

最初に聞いていた内容と条件が違う

例えば、小学校低学年の子供を持つママ薬剤師が、「勤務時間は14:00まで。学校行事予定に合わせて休みをとるなど、勤務日程を臨機応変に変えたい」と希望を出し、契約したとします。

しかし、現場にはそのような希望が伝わっておらず、常に通常シフトに組み込まれ、学校行事の時も休みを取れないというようなトラブルも発生しているのです。

また、契約上許されている範囲で自分の休みを伝えたにもかかわらず、それが原因で人間関係が悪化したというケースもあるようです。

滅多にないけど怖いトラブル

契約料金の更改を知らなかった

労働者派遣法の派遣元指針では、派遣料金が上がった時には、派遣労働者に支払う賃金も上げるように務めなければならないとされています。

派遣料金から賃金を引いた差額=マージンは、派遣元の経費や利益に充てられます。

派遣先から派遣元に支払われる派遣料金は上がっているのに、派遣元がそれを派遣薬剤師に知らせず、支払う時給を変えない場合、派遣元が受けとるマージンが増え、派遣元だけが利を得ていることになりますね。

こうした事態を防ぐために、改正労働者派遣法では、【1】派遣元と労働契約を締結するとき、【2】派遣先に実際に派遣されるとき、【3】派遣料金が変更になったときには、派遣料金を明示することを定めています。

しかし実際にはこの法律を無視している派遣元もあり、薬剤師本人に派遣料金の更改を伝えずに時給を据え置きにしていたため、トラブルに発展しているケースもあるのです。

派遣切り

企業が経営悪化などを理由に派遣契約を一方的に打ち切り、派遣社員が職を失うことをいいます。

契約自由の原則から、派遣先が派遣元の人材派遣会社と結んだ労働者派遣契約を期間満了前に解除することは可能であり、違法ではありません。

これにより、派遣労働者が人材派遣会社から解雇あるいは契約更新を拒否されるといったことは、いつでも起こり得るのです。2008年のリーマンショックの際にも、大きな社会問題となりました。

幸いなことに、このとき薬剤師業界はこのような派遣切りとは無縁でした。しかし、今後もこうしたトラブルに巻き込まれないという保障はありません。

派遣契約は、企業の経営が危なくなった時に真っ先に切られるもの、ということを覚えておきましょう。

信頼のおける派遣元を選ぼう

派遣によくあるトラブルは、派遣薬剤師の契約内容が、実際に働く場所である派遣先に伝わっていないために起こりがちです。

このような時に、間に立って調整するのが派遣元の担当です。相談したにもかかわらず、こういった調整をしない担当・派遣元であれば、変えた方がいいかもしれません。

また、労働者派遣契約は特殊な契約であるため、派遣会社にも、ある程度企業としての体力が必要になります。

・情報を開示している
・与信能力が高く、経営の安定したよい派遣先が多い
・経営状況が安定している

なども、派遣元を選ぶ際の重要なポイントです。

派遣薬剤師として働く際は、薬剤師求人サイトを経由して派遣会社の求人を紹介してもらうのがベストです。