「1日だけのスポット派遣で働きたい!」と考えるあなた!でも、ちょっと待ってください。薬剤師が1日だけのスポット派遣で働くには、法律上の細かい規制があるのです。

法律や実際の求人をみながら、スポット派遣のメリット・デメリットや、どんな点に気をつけたらよいかを考えてみましょう。

薬剤師のスポット派遣に関する法律

スポット派遣は法律で原則禁止!

スポット派遣とは、労働者派遣法における「日雇い派遣」のことで、労働契約の期間の定めを30日以内とする派遣形態です。

2012年10月の労働者派遣法の改正により、単発派遣・日雇い派遣は例外を除いて原則禁止となりました。

30日以内の細切れ派遣は、生活の見通しが立たず年金の権利もないことから労働法による雇用保障の趣旨を損なうものである、というのがこの規定が設けられた理由です。

しかし、このような禁止規定にも例外はあります。

スポット派遣が認められるケース

ひとつは、専門性に裏付けられた業務で、賃金など労働条件が買い叩かれてしまう恐れがないと考えられるものです。しかしこれには、残念ながら薬剤師業務は該当していません。

もうひとつは、労働者が他に生計を維持する手段がある場合です。

日雇い派遣で契約を切られたとしてもすぐに生活の基盤を奪われてしまう恐れがない労働者には、単発派遣・日雇い派遣が例外的に認められています。薬剤師のスポット派遣は、この例外規定に基づいて行われます。

具体的には、以下のいずれかの条件を満たしている場合となります。

  • 60歳以上の者
  • 雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる「昼間学生」)
  • 副業として従事する者(本業の年収が500万円以上の者に限る)
  • 主たる生計者以外の者(世帯年収が500万円以上の者に限る)

あなたが1日だけのスポット派遣で働くためには、この条件のいずれかに該当することを証明する必要があります。

契約を締結するたびごとに、年齢を確認できるもの・学生証・収入を確認できる書類(本人もしくは主たる生計者の源泉徴収票など)を提示しなければなりません。

派遣元の会社には、この条件を満たしているかどうか、契約締結の都度しっかり確認することが義務付けられています。

実際にはこうした規定はなかなか守られておらず、派遣元によっては書類提出を求めないところもあるようです。

このような派遣元は法律に対する意識が低く、あなた自身の権利が守られない可能性も高いので、登録を見送る方が良いでしょう。

スポット派遣の薬剤師求人例

【事業所所在地】
東京都八王子市(JR中央線八王子駅下車徒歩5分)

【処方箋】
日40枚

【診療科】
消化器内科/呼吸器科

【備考】
・ひとり薬剤師となります。(事務員はいます。)
・施設調剤がメインで、投薬はありません。 
・ユヤマのVマス分包機が扱える方歓迎

【勤務日】
8/24(木) 13:00~17:00 時給3,800円
8/31(木) 13:00~17:00 時給3,800円

薬剤師がスポット派遣で働くメリット

スポット派遣が可能な例外ケースに該当する人の多くは、主婦や子育て中の薬剤師です。

こうした、家庭のさまざまな事情を抱えている人たちにとって、スポット派遣のメリットは、何といっても「自分が働きたいときに働くことができる」ことに尽きます。

薬剤師求人サイトにあらかじめスポット派遣の登録をしておけば、毎日のように上記のようなスポット派遣情報満載のメールが送られてきます。

こうした情報の中から、自分の都合にあうスポット派遣の求人に応募することができます。

時給が高い

スポット派遣の求人は、高時給のものが多い傾向にあります。例えば前述の時給3,800円の求人の場合だと、午後だけの半日勤務で15,200円になりますね。

これは、どうしてもその日に薬剤師を確保したい派遣先の需要と、法律改正によりスポット派遣に対応できる薬剤師の数が減ったという供給のバランスが、高いところでつりあったためです。

今後もこの傾向は続くと思われます。

なおスポット派遣の中には、早めの応募に際して時給がアップされるケースがあります。

早めに薬剤師確保をしておきたいという派遣先の思惑によるものですが、こういった条件を利用してさらに高時給で働くことも可能です。

人間関係の煩わしさから解放される

どの職場にも人間関係の悩みはつきものです。派遣という働き方自体が、人間関係に悩む方にはオススメですが、なかでもスポット派遣はオススメです。

その1日さえうまくやりすごせばよいのですから、人間関係の悩みやトラブルは皆無といっていいでしょう。

地方の求人にも応募できる

スポット派遣の中には、新幹線での交通費を支給するというものもあります。薬剤師不足に悩む地方では、このような求人は珍しいものではありません。通勤圏がぐっと広がります。

薬剤師がスポット派遣で働くデメリット

あなたはまず、スポット派遣の派遣先では即戦力しか求めていない、ということを肝に銘じる必要があります。

“ 派遣先に行ってすぐに職場の様子を把握し、あれこれ説明しなくても少ない指示で対応できる ” 薬剤師が求められていますので、非常に厳しい職場といえるでしょう。

最低限の指示しか与えられない

職場での指示に割かれる時間は、数分から10分程度といったところでしょう。これだけで、その日1日の業務を回さなくてはなりません。

仕事内容は、派遣先により異なりますが、投薬・ピッキングなど、実際に派遣先にピンチヒッターとして必要とされる業務に、臨機応変に従事することになります。

診療科・業務内容・取り扱う機械などはあらかじめ求人内容に明記されていますので、応募にあたっては、自分のキャリアと照らし合わせて検討することが必要となります。

派遣先の情報が不足していたり、少しでも不安があったりする場合は、派遣元の担当に相談しましょう。

なお、高時給の求人では、一人薬剤師の場合もあります。これも求人内容に明記されていますので、見落とさないようにしましょう。

とある薬剤師の紹介会社のQ&Aページを見てみると、「はじめての現場では薬剤の位置などもわからないのではないか」という問いに対して「調剤経験が1年以上ある方は皆さま問題なくご就業されているのでご安心ください。」と書かれていました。

しかし実際は、慣れない場所での業務は想像以上に大変です。求人によっては「過去に当社の店舗で調剤経験のある方」という条件の付いたものがあるのも、こういった事情によるものでしょう。

自身のキャリアに自信がない人・ブランク明けの人は、スポット派遣で働くのは見送った方がよいでしょう。

契約外の要求をされる場合がある

スポット派遣の派遣先は、人手不足に悩むところがほとんどです。場合によっては、契約にない残業や契約外の業務を要求されることがあるかもしれません。

契約にないことを訴えても取り合ってもらえない場合は、すぐに派遣元に連絡を入れて対応してもらうことです。

信頼のおける派遣元に登録しよう

スポット派遣で働くには、法律上の規制やさまざまなメリット・デメリットがあります。このような働き方に対して最も大切なのは、信頼できる派遣元を選ぶことです。具体的には、

1. 日雇い派遣の例外条件を満たすことを確認するために、書類提出を義務付けるなど、法令遵守をする会社かどうか

2. 派遣薬剤師のキャリアと派遣先の求める条件のマッチングを適切にできるかどうか

3. 契約外の要求に対して、派遣元が派遣先に異議を申し立てることができる力関係にあるかどうか

という点をポイントに選ぶとよいでしょう。

スポット派遣で働く際は、信頼のおける薬剤師求人サイトを選びましょう。