過去の薬剤師は、医師の言うとおりに調剤・投薬するのが仕事の大部分を占め、患者に対するアプローチは良くも悪くも求められていませんでした。先人たちの努力によって、薬学的な知識を使って患者ケアに参加できるようになり、より多くの技能を求められるようになった現在、我々薬剤師はどのように患者と接していけばいいのでしょうか。
医薬品を通して患者のケアを進めるための手段、POSについてお話させていただきます。
POSとは何か
POSとは英単語を省略したもので、正式名称は「Problem Oriented System」。日本語にすると「問題志向型システム」となります。
もともとはアメリカで開発された患者中心の医療を目指すためのシステムです。1960年代に開発されたそのシステムは、1970年代になって日本でも導入されました。
それ以前には、医師中心で患者や他の職種の意向はくみ取らずに治療が進められていましたが、POSが導入されてからはわかりやすい診療録でさまざまな職種が治療に積極的に参加できるようになりました。それと同時に、医師のほかにもPOSの知識が求められるようになりました。
POSに求められる知識
耳にすることが多くなった言葉で「SOAP」というものがあります。よく混同されてしまいますが、POSとSOAPとはイコールで結べるものではありません。
SOAPはあくまでも記録方法を示しているものであり、POSのなかのごく一部分を担っているにすぎないのです。ですが、現状の日本ではPOSの根幹を担っているのもまた事実。SOAP形式の薬歴記載方法は習得する必要があるでしょう。
ちなみにPOSにおける診療録をPOMR(Problem Oriented Medical Record)といい、POSを実行するための最初がこのPOMRの作成となります。
POSは具体的に何をすればいいのか
POSは大まかに分けて三段階に分かれます。
POMR
まずはPOMR、薬局では薬歴の作成です。SOAPが推奨されていますが、実際にはきちんと患者の問題点を把握・対策出来るのなら記録方法に決まりはありません。
経験の積み重ねによりSOAPが患者の問題を浮かび上がらせるのに適している観点から推奨されていますので、できることなら採用していく方がいいと思われます。
監査(Audit)
次に行われるのが監査(Audit)です。患者の経過に問題は出ていないか、どういった治療計画を行っているか、POMRを使用して治療のチェックを行います。この段階で薬剤師が治療に関わったことによる評価をつけることになります。
ただしこれは薬剤師に点数をつけるわけではなく、次につなげていくために行われる、あくまでも監査です。間違いを恐れるのではなく、より良い医療を提供するための手段と理解してください。
修正(Revision)
最後に行われるのが、監査を通して浮かび上がった問題を訂正する段階、修正(Revision)です。修正を通してさらに良い医療を患者に届けていくことになります。
病院でのPOSであれば、退院時にどういった指導をするのかなど、終わりまでを含めた内容になります。ですが薬局では患者の退院といったことはありません。怪我や風邪などの一時的な体調不良は例外として、多くの患者は継続した服薬治療をしていかなければならないからです。
生活の質を維持し、治療を最大限活用するために薬局でのPOSを活用しましょう。
おわりに
POSはすでに様々な医療機関で実践されている方法です。薬局ではその浸透が遅かったために嫌厭しているところもありますが、今後地域でのチーム医療を行うためには必須の能力になることでしょう。
最初は今までのやり方から変えることに抵抗があるかもしれませんが、継続しているうちに形になっていくものです。この記事をきっかけにPOSについ少しでも考えていただければ幸いです。