保険調剤薬局の収入はどこからくるか考えたことがありますか?患者からだと答えた方は半分正解です。薬局にお金を入れてくれるのは、国民健康保険や社会保険支払基金などの国の機関です。保険調剤薬局の収入は国との契約があってはじめて発生します。もともとは国民から集めたお金で調剤報酬を支払っているのだから、答えは患者であっているかもしれませんが、間に国が挟まることで面倒な問題が生じます。それは法律です。法律をきちんと把握していなければ、薬局の営業を停止させられてしまうかもしれません。国との契約を問題なく履行するため、大切な部分を確認してみましょう。
薬局を取り巻く法律とは
まずはどういった法律が調剤薬局に関わってくるのかを確認しますが、調剤薬局を取り巻く法律はさまざま存在しています。薬局の構造などを規定している「医薬品医療機器等法(旧薬事法)」、勤務している薬剤師の業務内容を規定している「薬剤師法」、薬局内に保管している医薬品の中でも特別に規定されている向精神薬や麻薬、覚せい剤原料などの管理について規定されている「麻薬及び向精神薬取締法」「覚せい剤取締法」「毒物及び劇物取締法」はもちろん、保険調剤で調剤報酬の請求に必要となる「健康保険法」や「介護保険法」などの各種法律、最近では個人情報の取り扱いを規定した「個人情報の保護に関する法律」の順守も当然必要になっています。
医薬品管理に関する法律
簡単に確認できることから始めていきましょう。薬局内の医薬品の管理は十分に行き届いているでしょうか。向精神薬や麻薬などの特別に管理が必要になるものは、薬局監査でも初めにチェックされます。向精神薬は鍵のついた棚などに保管しておき、誰も注意できる状況にない場合には施錠が必要です。帳簿による出納の管理も必要ですが、これは第1類、第2類に関する義務です。第3類には義務がありません。では麻薬はどうでしょうか。麻薬の保管は鍵がかかる堅固な設備への保管が必要です。堅固な設備とは、つまり動かせないように固定された金庫などです。向精神薬とは違い、基本的には施錠したまま、必要時のみ開錠することになります。麻薬の出納は伝票のほかにも書類が必要になり、卸と薬局がお互いに譲受証・譲渡証を取り交わさなければなりません。これらは小さな違いですが、やはり麻薬の方が厳しい規制にされていますね。
薬局掲示物に関する法律
薬局の内外に掲示しなければいけないものも法律により決められています。医薬品医療機器等法や療養担当規則などにより取り決められていますので、当然掲示が義務とされています。掲示されていない場合には法律の不履行として指導されることもあるので注意が必要なことです。これもすべて記載するとなると膨大な数になりますが、実際に作成して掲示するとなるとそれほど手間ではありません。ただ数が多いだけに、過失による不備に注意すればよいだけです。
調剤報酬のための法律
初歩的なことですが、健康保険を使用する保険薬局の場合、保険薬剤師が調剤に従事している必要があります。こういったことを規定しているのが健康保険法です。調剤報酬は上記で紹介したような各種法律が順守されていなければ支払いを受けられないとされています。調剤報酬とは法律で規定された国と調剤薬局との契約ですので、当然守られていなければ契約不履行、支払いの義務も発生しません。薬局の収入源となる調剤報酬ですので、不備のないようにしておきましょう。
おわりに
少しですが法律に関する確認をさせていただきました。多種多様な法律がある中、すべて網羅するのは確かに大変ですが、調剤薬局で働いているのなら把握しておくことが求められます。それでももし至らない点があったとしても、何かすぐに罰則があるわけではありません。保健所の監査では、至らない部分を教えてもらえますので、真摯に受け止めて改善するようにすれば問題はないのです。知りませんでしたでは済まないのが法律ですので、しっかり勉強しておきましょう。