緩和ケア(ホスピス)。それは、病院の仲間のようでありながら、一般的な病院と対極的な場所。患者さんの命をどうにかして救おうとする病院と、患者さんが安心して死を迎えられるようにする緩和ケア。緩和ケア病棟で働く薬剤師は、それなりの覚悟が必要です。
緩和ケアでの薬剤師の仕事
緩和ケアの薬剤師の仕事は、痛みを緩和させてあげること。体も、こころも。
痛みを緩和させる仕事がメイン
緩和ケアの薬剤師の仕事内容は、疼痛の緩和がメインです。薬の種類や量などを細かく調整して、患者さんの痛みを少しでも和らげるというのが仕事。患者さんの症状を治すことではなく、和らげてあげることです。
この疼痛緩和のために薬をコントロールするというのは、とても高い技術が必要とされること。ちょっとでも調剤が狂えば痛みが和らぐどころか激しくなったり、逆効果になることもあります。そういった難しい仕事をこなすのが、緩和ケアの薬剤師です。
精神面でハードな仕事
緩和ケアの薬剤師は、技術的な難しさもありますが、精神的にハードな仕事でもあります。関わる仕事は終末医療。とても重く高尚な、人間の最終目的地であるテーマとひたすら向き合っていくことになるので、緊張感とストレスはかなり重たいものです。他の職場に比べると段違い。
死を待っている患者さんが入院しているので、いつ何が起こるかもわかりません。そのため、夜間勤務があるのは当たり前。交代で日勤と夜勤を担当し、生活リズムも狂います。いつなんどきでも気を抜くことができないので、肉体的にも精神的にもハードな仕事だと言えますね。
在宅での仕事もある
また、在宅での仕事がある場合もあります。入院するよりも、最期くらいは我が家で迎えたいという人も多いでしょう。そこで注目されている在宅緩和ケア。今や緩和ケア薬剤師は決まった職場を持たないというケースも多いですよ。
在宅緩和ケアと病棟での入院患者さんとの仕事を比べると、在宅のほうが精神的負担は大きくなります。在宅になると、その家にいる家族とのかかわりも当然深くなってくるので、いざ最期が来たときの精神的負担は大きいです。その分、やりがいもまた大きなものになります。
緩和ケアの薬剤師の求人
緩和ケアは、もともと民間で運営されていることが多かったものなのですが、昨今は国公立の病院でも多く開設・運営されています。その流れは全国的に広がってきていて、まだまだ発展途上な部分も大きいです。
現在では薬剤師の求人は全国的に見ると決して少ないとは言えませんが、地域を限定的に見てみると、かなり少なくなっています。在宅緩和ケアも進んでいるということも合わせて考えると、職場は家から遠くなると思っておいたほうが無難ですね。
緩和ケアの薬剤師になると得られるスキル
緩和ケアの薬剤師としてはたらくと、末期がん・エイズといった死に関わる重たい病気の知識が増えたり、繊細な調剤技術が身につきます。ただ、それだけではありません。緩和ケアの薬剤師としてはたらくと、人間としての徳が身につくのです。
関わる患者さんは、死を目前に迎えている人。そんな人の心と体のケアをするのが仕事ですから、心のケアをする力が磨けます。友達の相談をきいて、友達の心を癒してあげることもできるようになるかもしれません。
さらに、人生のゴールを迎える人たちの人生に触れることによって、人生観にも大きな影響を与えるということが多いです。人間性も豊かになることでしょう。それが自分の周囲にも影響を与えることもあります。
もしも周りの人が不治の病にかかってしまったら。周りの人の最期や自分の最期に思いをはせることも多いでしょう。周りの人が最期を迎えつつあるとき、どういった対応をすればいいのかがわかっているというのも強みです。
そういった人間としてのスキルであり、徳が身につくのが、緩和ケアの薬剤師の最も大きな特徴であり、やりがいであると言えますね。
まとめ
人の最期に関わる仕事。薬よりも患者さんひとりひとりに深く向き合って、寄り添う姿勢が大切になります。緩和ケアで働いている薬剤師には、大きな覚悟が必要です。
その分、やりがいはとても大きく、人生において「緩和ケアの薬剤師としてはたらいたこと」がとても大きな意味合いを持つことでしょう。