緩和薬物療法認定薬剤師とは
緩和薬物療法認定薬剤師は2010年度から、一般社団法人日本緩和医療薬学会によって実施・運用されている認定制度です。2010年から2012年までの認定試験では、235名の緩和薬物療法認定薬剤師が生まれました。
日本においての緩和医療というのは、需要が年々高まっている分野です。特に、日本人の死因第一位といわれているがんの治療における緩和医療に関しては、がん治療の初期段階からずっと平行して行っていくもの。適切な薬物療法をすることができなければ、治療全体にも大きく関わってくることなので、とても重要性が高い役割であると言えます。
緩和薬物療法認定薬剤師というのは、主にがん治療での緩和薬物療法に関係している専門的知識を深く持っていることが認められた薬剤師のこと。緩和薬物療法の専門家であり、その分野において院内で頼られる立場であるということです。緩和ケアチームの一員として、他の職員たちに緩和ケアについての専門的知識や情報を提供していくという大切な役割を担っています。
緩和薬物療法認定薬剤師に必要な知識や技術
緩和薬物療法認定薬剤師には、緩和ケアに関する専門的な知識と技術だけでなく、がんについての専門的な知識も必要です。緩和治療というのは、主にがん治療において使われるものなので、当然がんに関しても深い知識を有している必要があります。
また、専門的な分野になるので服薬指導がとても難しく、「難しいことをどれだけ簡単に説明することができるか」という力も問われます。服薬指導や処方支援の専門的な技術、コミュニケーション能力にチームの一員として働く協調性までもが必要になってくるというわけです。
緩和薬物療法認定薬剤師になるには
申請資格
- 日本の薬剤師免許を持っていること
- 5年以上実務経験があり、日本緩和医療薬学会の会員を継続していること
- 申請時、薬剤師認定制度認証機構によって認証された、生涯研修認定制度による認定薬剤師・日本病院薬剤師会生涯研修履修認定薬剤師、あるいは日本医療薬学会認定薬剤師のいずれかであること
- 3年以上継続して緩和ケアチーム、緩和ケア病棟を有している病院・診療所など、いずれかの施設で緩和ケアに従事している薬剤師であることの証明。または、3年以上継続して、麻薬小売業者免許を取得していて、がん診療を行っている在宅療養支援診療所などの医療機関と連携している保険薬局などに勤めていて、緩和ケアに従事していることの証明。
- 過去5年以内、認定対象になっている講習を毎年20単位以上のペースで100単位以上履修していること。過去5年以内に、がん疼痛緩和・医療用麻薬の適正使用推進のための講習会に1回以上は参加していること。
- 病院等に勤務する薬剤師は、緩和ケア領域薬剤管理指導実績を30症例以上提出すること。保険薬局に勤めている薬剤師は、緩和ケア領域服薬指導などの実績を15症例以上提出すること。
- 所属長や保険薬局の開設者の推薦
- 上記を全て満たして、はじめて認定試験を受けることができる。
- 認定試験に合格したものは、認定申請を行うことができる。
難易度は?
試験自体の難易度よりも、受験資格を全て満たすにたどり着くまでの条件をクリアするのが難しいという人が多いようです。中でも「緩和ケア薬剤管理指導の実績を30症例以上提出する」という条件をクリアするのがなかなかに難しく、苦労する人が多くなっています。
試験に関しては、緩和ケアについて基本的な知識があれば問題ありません。そのほかに、化学療法や放射線治療・がん治療などに対しての広い知識が必要になりますが、研修をしっかりと受けてその内容を頭に入れていればさほど苦労はしないでしょう。
試験当日は、受験票と鉛筆・消しゴムのみで、電卓は必要ありません。年に1度のみの試験なので、逃すと来年までチャンスがなくなってしまうので注意しましょう。逃さないようにするには、まず体調管理と試験会場の場所の下見が大切です。当日は事務局員は不在となっているため、必ず下見などはしておきましょう。
緩和薬物療法認定薬剤師の活躍の場
緩和薬物療法認定薬剤師の活躍の場は、緩和ケアが行われている病院・ホスピス・保険薬局などです。在宅でも必要性が高まっているので、在宅の仕事もありますね。
幅広い職場で活かすことのできるものですし、まだまだ開始されてから間もない制度です。日本人の死因トップが「がん」である限りは、ほぼ普遍的に需要があると言っても過言ではないでしょう。将来性は十分あります。