HIV感染症薬物療法認定薬剤師とは

HIV感染症薬物療法認定薬剤師は一般社団法人日本病院薬剤師会が実施・運用している認定薬剤師制度のうちのひとつ。HIV感染症薬物療法認定薬剤師の人数は、平成26年度の時点では87名。他の認定薬剤師制度に比べるとかなり人数が少ないです。

HIV感染症というのは昔ほど騒がれることはなくなってきていますが、まだまだ感染者数がいますし、増えています。厚生労働省が調査したところによると、2006年から現在に至るまで毎年1,000名以上感染者がいると言われている。それだけ感染者がいても、早期に「これHIVだ」と気がつく人はほとんどいません。

潜伏期間が人それぞればらばらですから、早期発見も難しく適切な治療を行うことも難しい。そんな難しいHIV感染症治療は、現在ほとんどが薬物療法によるもの。根治治療法が確立されていない現在、長期間にわたる薬物投与に頼るしかないというのが現状です。

その現状において、HIV感染症患者に現在考えうる最適の治療を施すことができる薬剤師を育成する目的でこの認定薬剤師制度が実施されました。HIV感染症薬物療法認定薬剤師は、HIV感染症治療の中核という役割になるわけです。

HIV感染症薬物療法認定薬剤師に必要な知識や技術

必要なのは、HIV感染症に関する知識と、常に「HIV」という言葉に敏感に反応できるアンテナです。HIV感染症の患者に投与する薬・・・抗HIV薬の情報を常に集め、副作用や新薬情報を分析・医師や看護師などに伝えていかなくてはいけません。

抗HIV薬というのは、認可がすぐにおりてしまいます。副作用について十分な対策をしているかというと、そうではない場合も結構あるわけです。副作用についての情報を分析し広めていくのは他でもないHIV感染症薬物療法認定薬剤師というわけですね。

また、HIV専門チームにいるほかの医療従事者に得た情報について説明しなくてはいけないので高い説明力とコミュニケーション能力・強調性も必要とされます。

HIV感染症薬物療法認定薬剤師になるには

認定資格

  • 日本の薬剤師資格を持った薬剤師であること
  • 5年以上の実務経験があり、日本病院薬剤師会の会員であること
  • 別に定める学会のいずれかの学会であること
  • 日病薬病院薬学認定薬剤師であること。ただし、日本医療薬学会認定薬剤師であれば、これは必要ない
  • 病院や診療所や保険薬局にて、HIV感染症患者に対する指導を3年以上継続して従事していることの証明
  • 日本病院薬剤師会が認定する研修施設で、実技研修を16時間以上履修する、または、研修施設で3年以上、HIV感染症患者に対しての指導を行っていると証明できること
  • 日本病院薬剤師会が認定しているHIV感染症領域に関する講習会や別に定める学会が主催しているHIV感染症領域の講習会を10時間5単位以上履修すること
  • HIV感染症患者に対しての指導実績が30症例以上あること
  • 病院長や施設長の推薦
  • 日本病院薬剤師会が行っているHIV感染症薬物療法認定薬剤師認定試験に合格すること

なお、これは平成27年2月14日に改定されたものですが、平成33年度までに認定試験を受けるのであれば、改定前の申請資格での受験が可能です。

試験について

試験の問題は、全部で50問。回答方式は5択の選択肢になっています。難易度に関しては高めですが、きっちりと対策をしていれば問題ないでしょう。それよりも「指導実績30症例」を満たすほうが難しいと感じる人が多いようです。

平成26年度の出題範囲については、例えば以下のようなものがあります。

  • HIV感染症の概略についての説明
  • 針刺し事故対策についての説明
  • HIV感染症治療ガイドラインについての説明
  • 患者が自己決定に至る過程についての説明
  • 薬害エイズについての説明

平成26年度の主な参考図書は、例えば以下のようなものです。

  • 平成25年度厚生労働省科学研究費補助金エイズ対策研究事業「抗HIV治療ガイドライン」
  • 日本肝臓病学会ガイドライン「B型肝炎治療ガイドライン・第2版・簡易版」
  • 日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会「インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン」

HIV感染症薬物療法認定薬剤師の活躍の場

HIV感染症薬物療法認定薬剤師の活躍の場は、病院・診療所・保険薬局・製薬メーカーなどの、HIV感染症を扱っている現場です。

HIV感染症について扱っていればどこでも活躍できますし、HIV感染症の治療というのはまだまだこれから確立させていかなくてはいけないもの。将来性もあると言えるのではないでしょうか。