「ドラッグストアに転職してみよう!」と転職を心に決めた薬剤師の皆さん、どんなお店に勤務しようかイメージはできていますか?

「ドラッグストアに決めたはいいけど、ドラッグストアに勤めるのはこれが初めてだから、どんな職場かわからない。」

「初めてドラッグストアに勤務する人に、初心者向けのお店ってあるかなあ?」

「ドラッグストアはお給料が良いけど、残業が多かったりいそがしかったりするよね?最初からそんな大変なところは嫌だなあ。」

そんなドラッグストア未経験の皆さんに、筆者の今までの経験を踏まえて最適な職場を提案したいと思います。

ドラッグストア未経験の薬剤師がまず一番最初に知っておきたい「仕事のバリエーション」

ひとくくりにドラッグストアと言っても、そのお店の中で薬剤師がどんな仕事をしているかは様々です。

一般的にドラッグストアの薬剤師のイメージはOTC専任(OTCだけを販売する仕事です。)であることが多いですが、調剤室が併設されているパターンですと、調剤のウエイトが大きくなったり、調剤のみ行うケースだったりと様々です。

初心者がそれぞれを選ぶメリットについて解説します。

OTC専任

OTC専任とは、調剤室がそもそも置いていないドラッグストアで、一般用医薬品のみ販売する仕事です。
調剤をする必要がありませんので、このお店で働く場合は医療用医薬品の知識は必要ありません。

ドラッグストア初心者がこの形のお店で勤務するメリットは、やはり覚える薬の量が少ないためとっつきやすいということです。

また、OTCを売る薬剤師といえばロキソニンなどの1類医薬品を販売するイメージが強いかと思いますが、多くのお店では2、3類医薬品のほうが売り上げは多いものです。

2、3類医薬品は種類が多いですが、お店にベテランの登録販売者がいる場合、それらについては頼ることもできます。

「薬剤師が登録販売者に頼るのってどうなの…?」と思うかもしれませんが、最初のうちは誰でもわからないものなので、プライドを捨てて頼ってみることをお勧めします。

そうやってコミュニケーションを取ることで、後々仕事を頼みやすくなるなどのメリットもたくさんありますよ!

調剤兼任

調剤兼任とは、ドラッグストア内に処方せんを受け付ける調剤室があり、その業務とOTC販売の業務をどちらも行うことです。

一見忙しそうに思いますが、この形で成り立っているところは、1日の処方せん枚数がそこまで多くない場合がほとんどです。

メリットは、一般用医薬品と処方せん医薬品のどちらにも触れることになるので、幅広い知識を得ることが出来ます。

しかし、調剤室はトラブルがつきものなので、独立型薬局などで1人勤務を行ったことがなかったり、1人勤務に慣れてなかったりする方はこの形の店舗は避けた方が良いです。

しかし、もし調剤室が大きく、薬剤師が複数人いる場合は先輩方と一緒に勤務することになると思いますので、初心者の皆さんでもおすすめです。

薬剤師1人のほうが気楽な場合で、経験があり1人勤務ができる方には1人勤務も可能だと思います。
残業や業務内容も自分次第ですので、自分のペースで仕事が出来ます。

その場合でも、OTC知識については研修や登録販売者からのフォローをお願いしましょう。

調剤専任

ドラッグストアにおける調剤専任とは、ドラッグストア内に調剤室があるのにも関わらず、薬剤師がほとんどOTCに関わらず、調剤のみ行う形です。

この場合、調剤室がとても忙しく、丸1日調剤室にいなければ仕事が終わらないパターンが多いです。

関わるOTCは1類のみで、その他はほとんど登録販売者にお任せしているような状態がほとんどです。

ドラッグストアとはいっても、ほとんど調剤薬局ですので、調剤経験のある方ならば問題なく業務ができると考えます。

「ドラッグストアに勤務するとお給料が上がるから転職したい、でもOTCはそこまでやりたくない!」と思う方には最適な職場かもしれませんね。

逆にOTCに興味があって転職される方には向いていないでしょう。

また、調剤室が忙しいと薬剤師が複数人いることが多いですので、何かトラブルがあったとき周りを頼りやすいというメリットがあります。

どれを選ぶにしても、気を付けること

どのパターンだったとしても、配属先のお店に登録販売者の資格を持ったスタッフが居なければ、2、3類のOTCでも薬剤師が対応しなければなりません。

そのため、ドラッグストアに転職を考えているときは、薬剤師以外の人員配置も気にしておいたほうが良いです。

登録販売者がお店に配属されていたとしても、薬剤師がいないときにしか来ないのではあまり業務は軽くなく、初心者向けとは言えないでしょう。

「勤務開始したら、薬剤師が私1人で、あとはレジ打ちのパートさんだけだった…」

なんてことにならないよう、よく確認してから転職先を決めましょう。

また、OTC専任・調剤兼任の場合発注や品出しなどの接客以外の業務が課せられる場合もあります。

自分が仕事をしながらどれだけこなせるのか、キャパオーバーにならないような職場の選択も重要でしょう。

ドラッグストア未経験の薬剤師が知っておきたい教育制度

ドラッグストア未経験の皆さんが気になることの1つに、「どんな教育制度があるのか」というものがあると思います。

先に答えを述べると、「会社によって様々」なのです。

大きな会社の場合、研修はカリキュラムまで組まれている場合が多いですが、中小企業ですとそうでもない場合が多いです。

また、調剤が業務内容にある場合、そちらの研修も大変重要になります。

大企業と中小企業の研修制度について比較検討していきましょう。

大手ドラッグストアチェーンの場合

大手で中途採用が多い場合は、毎月のように中途採用研修を行っている企業もあります。入社日にもよりますが、集合研修からスタートできる場合もあります。

OTCに初めて触れる場合は、接客以外にも商品知識の研修を行ってくれる場合があります。

筆者が研修を受けた企業は、接客以外にも医薬品、介護用オムツ、化粧品など様々なアイテムの研修があり、自分が苦手な分野の研修を受けることができました。

大企業はその上でOJT(現場で先輩について学ぶ研修)の制度もしっかりしているところが多く、初めてOTCに触れる場合かなり手厚く迎えてくれる場合がほとんどです。

調剤が業務内容にある場合では、調剤研修がある場合もあります。

皆さんに調剤経験があっても研修は受けておいた方が良いでしょう。社内ルールは企業によって異なることが多いです。

中小企業の場合

そこまで中途入社の社員が多くない中小企業は、社員1人や2人のために集合研修を行ってくれる場合は少ないでしょう。

中小企業の場合、独自の研修制度を持っていることが多いです。ほとんどがOJTで、先輩社員について基本的なことを学びます。

薬の知識などもわからないことは全てここで聞くことになるので、わからないところを遠慮なく質問できるタイプの方は、中小企業でうまくやっていくこともできると思います。

大企業のようにマニュアルが多くない場合がほとんどなので、研修期間がそこまで長くない方が嬉しい場合は、中小企業での勤務を視野に入れると良いです。

研修の面では初心者は大企業のほうがおススメです。

薬剤師としての今までの経験を上手く活かそう!

ドラッグストアが初経験だからと言って、皆さんは社会人1年目の新卒さんたちとは違います。今までの経験を活かせるのなら、利用しない手はないと思います。

前職が独立型の調剤薬局(OTCが置いていない場合)である方と、病院で勤務していた方、また製薬企業や医薬品卸から転職する方の3パターンでお勧めを紹介いたします。

独立型の調剤薬局で働いたことがあるけど、ドラッグストアは未経験!

独立型の調剤薬局で勤務経験のある方は、調剤兼任薬剤師かOTC専任薬剤師をお勧めします。

その理由は、調剤専任の場合は独立型の調剤薬局と業務内容がほとんど変わらず、変化を求めて転職した場合は意味があまり感じられないことが多いためです。

「業務内容が変わらないほうがいい!給料が上がればいい!」という場合は調剤専任薬剤師も良いかもしれません。

OTC専任の場合はまったく新しい知識が必要になりますし、調剤兼任薬剤師の場合はOTCと調剤どちらもバランスよくこなす必要があります。

どちらも大変な道ですが、調剤の知識がある方がOTCの知識を得ることで将来の選択肢が広がりますので、ぜひOTCの道に進んで欲しいと思います。

病院薬剤師として働いたことはあるけど、ドラッグストアは未経験!

病院薬剤師の経験がある方は、まず調剤専任をお勧めしたいです。

あつかっているものは医療用医薬品でも、病院の調剤室と薬局の調剤室はかなり異なります。

病院からドラッグストアは一気に雰囲気が変わりますので、まず調剤室で慣れてからOTCへステップアップしたほうが、無理なく仕事ができると考えます。

もちろんOTCにいきなりチャレンジするのも素敵だと思います。

しかし、病院の患者さんとドラッグストアのお客さんはずいぶん違いますので、少しずつ慣れていきましょう!

医薬品関連企業からの転職。お客さんや患者さんと関わるのが初めて!

企業から転職されてきた方は、物腰が柔らかくゆったりお仕事をされる方が多いです。

ビジネスマナーなどはしっかりしていますが、調剤薬局などの暗黙のルールなど(分包機の掃除やダブルチェックなど)に慣れることに時間がかかってしまうことがあります。

そのため、まずは細かいルールの少ないOTC専任から始めることをお勧めします。

MRやMSを経験してきた方はお客さんと話すことも得意なことが多いですので、スキルの面でも向いていると考えます。

調剤まで足を伸ばしたい場合は、まずOTCでドラッグストアの雰囲気に慣れてからチャレンジしてみると良いかもしれません。

調剤未経験の場合、医療用医薬品を覚えるのが大変なので、社内で研修があるならば積極的に参加してみましょう!

結局、未経験者にお勧めのドラッグストアってどんなところ?

以上のように、ドラッグストアに転職すると言っても、ご経験や境遇によって選ぶべき職場は異なってくると思います。

しかし、ドラッグストアが未経験の方がドラッグストアで勤務していくうえで最も大切なのは、「充実した研修制度」であると考えます。

いくら社会経験があるとはいえ、未経験の職場で働くことは誰でも勇気が要るものです。

いきなり現場に出されるのではなく、きちんと基本の接客とオペレーション(お店の決まりなど、お店を効率よく回すために必要な知識です。)についてしっかり学んでから現場に出るのに越したことはないのです。

そのため、転職活動時に面接や説明会などに赴くことになると思いますが、みなさんは重点的に研修制度について質問すべきでしょう。

転職サイトを使う場合でも、研修制度についてきちんと聞いておいてください。

お店に立つ基礎が出来れば、意外とどんなお店でもうまく立ち回れるようになるものです。

みなさんがドラッグストアで1人でも多くのお客さんや患者さんに感謝される薬剤師になれるよう、応援しています!