子どもの頃お世話になったという人も多いはずの小児科。患者として病院やクリニックに行く場合はあまり薬剤師の存在に気がつきませんが、実は小児科では薬剤師は重要な立ち居地を果たしています。
小児科は保護者とのやりとりが大切
小児科病院の実際の患者さんは子どもですが、患者本人である子どもよりも保護者との付き合い方が大切です。
保護者に同調して立場に理解を示す
小児科の薬剤師にとって必要なスキルの筆頭とも言えるほど大切なスキルです。同調する力。患者さんや保護者の方にとって、その病院で出会う最後の白衣を着る職員が薬剤師。薬剤師と実際に会話をするのは、保護者ですよね。
そういうわけで、薬の説明などは全部保護者の方にすることになります。ただし、実は「ただ薬の説明をしたり料金の精算をしていればいい」という接客ではないんです。保護者ひとりひとりに共感し、臨機応変に対応しなくてはいけません。
保護者がその小児科内で質問をするのは、薬剤師との会話が最後のチャンス。しかも小児科に連れて行くのはお母さんが多い、薬剤師は女性が多いということから、話しやすく、「お医者さんにききそびれたことがある」「薬多いですね」など質問や本音をもらす人が多いのです。
そのため、相手の本音をまずは一旦受け止めて、相手の立場を理解し、同調することによって、治療をするのに重要になるような患者さんの情報を得ることもできます。「実はこんな薬を今飲んでいて」「実はこの前この薬飲んだら副作用が・・・」というような話をききだすことができるので、同調力は小児科で働く薬剤師にとっては必須スキルですよ。
保護者を観察しよう
また、保護者を観察することでも投薬治療に必要な情報をききだすことができる場合が多くあります。受診している曜日と時間帯、服装や子どもとの会話などから患者さんを取り巻く過程状況を推察することが可能です。
そうして観察して推察し、保護者を分類しましょう。投薬をするにあたって把握しておきたいのは、「兄弟や姉妹がいるか」「母親が専業主婦かどうか」「祖父母と同居しているまたは近くに住んでいるか」の三つ。単純にいえば、子どもの面倒を日中みることができるかということですね。
そういった家庭環境や親のライフスタイルによって、アドバイスは違ってきます。たとえば、母親が専業主婦の場合は単純にお母さんに薬の説明をして「飲ませてあげてくださいね」で済みますが、仕事をしている場合で年の離れた兄がいる場合だと、お兄さんに面倒をみるように伝えておいてくださいだとか、子どもでもわかりやすいようなアドバイスをしてあげるといった具合ですね。
小児科の薬剤師は服薬指導がかなり難しい
小児科の薬剤師の仕事の難しいところは、全て「服薬指導」に収束します。
前項でも述べたとおり、保護者への共感と観察をしたら、今度は実際の服薬指導をしなくてはいけませんよね。先述したとおりの「家庭環境やライフスタイルに合わせて説明をする」だけではなく、保護者ひとりひとりに寄り添った服薬指導をすることが大切です。
若いママさんとかだと、説明口調すぎるとまともにきいてもらえないということもあります。そういった場合には、世間話をするかのように薬の説明をし、治療のアドバイスをするというような工夫が必要です。
それはとても大変なことで、難しいこと。頭をフル回転させなければいけませんし、患者さんと保護者が目に入るところにいるときにはその会話にも注目していなければできない芸当です。とても労力を使うことでもあり、技術が必要なこともでもあります。
子どもが好きというだけではできない仕事
子どもが好きだから小児科で働きたいという薬剤師も結構大勢いらっしゃいますが、小児科は子どもが好きだというだけではつとまらない職場です。関わりあうのはむしろ保護者のほうですから、服薬指導が全て「間接的」になってしまうのが難しいところ。
直接患者さんに説明することができないので、小児科薬剤師は難しいのですが、かといって年収が他の職場に比べて高いかというと、そうでもありません。平均年収は400万から500万円程度と言われています。
まとめ
小児科の病院・クリニックで働く薬剤師には、意外と多くのスキルが必要とされます。それは、保護者への同調や観察とそれに合った服薬指導を行うことのできる力。高いスキルが要求される割には年収が高いわけでもないので、不満は多いようですが、それ以上にやりがいを感じている薬剤師の方も多いです。
自分なりの観察方法や服薬指導のコツなんかを見つけると、保護者観察が楽しくなるかもしれませんね。