服薬指導だけでなく栄養管理面からも患者さんをサポートしたい!という薬剤師にお勧めの選択肢に一つに病院の栄養管理サポートチームがあります。

今回はこの栄養管理サポートチームに焦点をあて、チーム内で薬剤師が果たす役割について解説したいと思います。

栄養管理サポートチームとは

栄養管理サポートチームとは医師、管理栄養士、薬剤師、看護師、臨床検査技師などからなる医療チームであり、各スタッフが持つ専門知識や経験を駆使して患者さんの栄養状態を最適に保つことを目的としています。

栄養管理はあらゆる治療の基盤となる患者ケアの一つです。

患者さんの栄養状態が悪いと病気の回復にも時間がかかり、術後の感染症や合併症を起こす危険性も高まるため、適切な栄養管理は治療成功の鍵を握っていると言えます。

栄養状態が患者さんに与える影響については、患者さんのバイタルサインだけでなく、服用中の薬との相互作用、臨床検査値の変化など様々な観点から評価する必要があります。

このため、複数のスタッフが職種の垣根を超えて協力し、各自の専門知識を活かすことで初めて適切に管理できるのです。

栄養管理サポートチームにおける薬剤師の業務

2010年の診療報酬改定において、栄養サポートチーム加算の要件として「チーム内に栄養管理について専門的な知識や技能を有する専任薬剤師を配置すること」が明記されました。

これは、薬剤師がチームにとって不可欠な存在であり、その責任が重大であることを示しています。

ここでは、薬剤師がチーム内で果たす具体的な役割について解説していきたいと思います。

静脈・経腸栄養療法のサポート

嚥下障害、認知症などのため口から食物を摂取できない患者さんは、静脈・経腸栄養療法により栄養を吸収しなければなりません。

静脈栄養療法とは、血管から点滴によって栄養入り輸液を補給する方法です。

また、経腸栄養法とは、口や鼻から胃までチューブを挿入して、または胃ろう(内視鏡を使って胃に空ける小さな穴)を作ることで栄養を胃に送り込む方法です。

薬剤師はこれらの療法の実施にあたり、経腸栄養剤や、電解質輸液、アミノ酸輸液などの各種輸液の特徴を理解したうえで、最適な製剤や投与経路を医師にアドバイスし、栄養療法の計画作りに参加するといった役割を果たします。

また、静脈栄養輸液の無菌調整も薬剤師の重要な仕事です。

「静脈点滴注射剤などの衛生管理に関するガイドライン改訂」には高カロリー輸液製剤の調製は、可能な限り薬剤部で無菌環境下に行うように記されています。

ある報告によると、薬剤部で無菌混合した輸液剤では細菌が全く検出されなかったのに対し、一般病棟で混合した輸液剤では約15%に細菌が検出されており、病棟での混合はリスクが高いことが分かります。

このため、経腸栄養剤など各種輸液の調製には熟練した技術をもつ薬剤師の存在が欠かせません。

栄養療法のモニタリング

栄養療法が適切に実施されているかどうかのモニタリングも薬剤師にとっての重要な仕事の一つです。

病院薬剤師は病棟に出向き、ベッドサイドで患者さんと対面しながら服薬指導や副作用のモニタリングなどの薬剤指導管理業務を行います。

栄養管理サポートチームに属する薬剤師は、この業務の際に患者さんの栄養学的な状態も併せて管理します。

たとえば、患者さんが摂取している栄養剤と服用中の薬の相互作用について確認し、必要があれば医師に処方内容の変更を提案します。

また、入院直後で脱水を起こしている患者、抗癌剤を投与する患者、脳卒中で救急搬送された患者などは栄養状態が薬物治療に及ぼす影響が特に大きいとされています。

薬剤師はこのような患者の病態について特に注意深くモニタリングし、必要な情報を医師に伝え、処方提案をするなどします。

患者さんやご家族に対する栄養療法のサポート

患者さんやご家族に栄養療法の目的や方法などを分かりやすく解説し、理解や納得を得るように努めることも薬剤師の果たすべき役割と言えます。

患者さんの嗜好や生活習慣を踏まえたうえで、患者さん本人やご家族と相談しながら最適な食事療法を提案したり、個別あるいはグループで栄養指導をしたりします。

器材の管理

栄養療法に用いる器材の管理も薬剤師の重要な仕事の一つです。

具体的には、カテーテル、輸液ライン、輸液ポンプ、CVポートなどの各種デバイスの適正な使用法について情報提供し、リスクマネジメントすることで、例えばカテーテルによる血流感染の防止などに貢献することができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

普段はそれほど脚光を浴びることのない栄養管理サポートチームですが、その業務内容は多岐にわたり、患者ケアの中でも重要な位置を占めています。

チーム内で薬剤師が果たす役割は多く、医師や管理栄養士と並んでチームを主導する立場にもあると言えます。

また、栄養管理についてのさらに高度なスキルを求める方には栄養サポート専門薬剤師という認定資格も用意されています。

服薬指導だけではなく栄養管理も含めた総合的な患者ケアに携わりたい方、他の薬剤師より一歩進んだ栄養学的知識を身に着けてキャリアアップに活かしたい方などは栄養管理サポートチームをご検討してみてはいかがでしょうか。