薬剤師の仕事にはつらい場面が付き物ですが、中でも病院薬剤師は特にきつそうというイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回は病院薬剤師業務の中で一番きついと思われる場面や瞬間について見ていきたいと思います。

ただし、どんな場面が一番きついかは人によって異なるため、ここでは多くの病院薬剤師が「これはきつい!」と思っているものをいくつかご紹介したいと思います。

夜勤がきつい!

夜勤は病院薬剤師ならではの業務と言えます。通常、夜勤は薬剤部スタッフが当番制で行うため、誰もが担当する可能性があります。

通常は月に2~3回、中には毎週1回当番が回ってくる病院もあります。

また、新人薬剤師でも就職してから3ヶ月程度経過していれば容赦なく夜勤を担当させられることもあります。

病院側も人員に余裕がないため、通常、一晩に配置される薬剤師は一人のみです。

そのため、夜勤を担当する薬剤師はその時間帯に薬剤部で起こるすべての行為に対して責任を負う立場となります。

夜勤の仕事内容は、容態が急変した入院患者さんのための調剤、救急外来への対応、注射剤や点滴剤の調製、緊急手術時の麻酔薬の準備、医師、看護師、患者さんからの問い合わせ対応など多岐に渡ります。

こうした業務を深夜に睡魔と闘いながら迅速にこなさなければならず、精神的にも肉体的にも非常にハードと言えます。

中でもつらいのは医師からの問い合わせです。夜勤は研修医が担当していることが多く、薬についての知識も少ないために様々な質問が薬剤部に飛んできます。

「この薬は授乳中に使えるの?」「1歳の子供が発熱しているけどどの薬を出せばいいの?」「抗生物質の使い分けを教えて欲しい」などなど矢継ぎ早に質問を浴びせかけられることもあり、経験の浅い薬剤師だとパニックに陥ることもあります。

インフルエンザや風邪のシーズンには小児用の粉薬がたくさん処方されますが、これらも研修医や小児科以外の医師が処方することも多いため、薬の投与量が間違っていることも多々あります。

「間違えて10倍量の薬を投与したために患者さんが昏睡状態になった!」などという事態は絶対に避けなければならないため、薬剤師は眠気や疲労が襲ってくる中で細心の注意を払って調剤に当たらねばなりません。

このように、疲れや眠気、一人薬剤師のプレッシャーと闘いながらの夜勤業務のつらさは想像を絶するものがあり、病院薬剤師の仕事の中で最もつらいと感じている薬剤師も多いそうです。

残業がきつい!

病院で働く薬剤師はドラッグストアや調剤薬局に比べて残業が多めと言われています。

特に大学病院などの大病院では毎日大量の処方箋が発行されるため、日中のうちにすべての業務を終わらせることが困難であり、日常的に残業が発生することも珍しくありません。

たとえ残業になってもきちんと手当が支払われるならまだいいですが、中小規模の病院ではサービス残業になることもあります。

定時に帰れないうえにただ働きを強いられるという状況は当然ながら大きなストレスとなり、中にはこれが理由で転職を考える薬剤師も出てきます。

私の知り合いの薬剤師で、勤務先の病院の長時間残業に耐え切れずに調剤薬局に転職した方がいました。

その方の勤めていた病院ではほぼ毎日残業があり、ひどい時には23時まで残っていたそうです。

このように病院薬剤業務は残業ありきという考えが蔓延しており、プライベートを重んじる方にとっては大変きつい状況と言えるでしょう。

他職種との人間関係がきつい!

病院薬剤師業務の最もつらい場面として他職種との人間関係を挙げる薬剤師は大勢います。

調剤薬局やドラッグストアと違い、一般に病院における薬剤師の立場は弱いです。

病院では医師や看護師が医療の中心的役割を担っており、薬剤師は臨床検査技師、管理栄養士などその他の医療スタッフと同様に補助的な位置づけとなります。

特に旧態依然とした大学病院や田舎の病院などでは薬剤師の存在が軽んじられる傾向にあり、病棟業務やカンファレンスでも肩身の狭い思いをすることも珍しくはありません。

中にはこうした状況に耐えられずうつ病になったり職場を去ってしまう薬剤師もいるほどです。

以下に、医師や看護師との具体的なトラブルの事例をご紹介します。

医師とのトラブル

病院薬剤師の中には医師との人間関係に悩む人が少なくありません。

薬剤師として業務を遂行するうえで、時には医師の発行した処方箋の内容や治療方針に口を挟まないといけない場面に必ず遭遇します。

そんな時、素直にこちらの意見を聞き入れてくれる医師もいますが、薬剤師の指摘に対してあからさまに不機嫌になったり、中には怒鳴りつけてくる医師もいます。

特に病院内では医師と薬剤師は同じ職場に勤務するスタッフ同士のため、薬剤師に対して露骨に横柄な態度をとる医師も多くいます。

私の知り合いの病院薬剤師はある医師が処方した薬の用量が多すぎるのではないかと疑問をもったため、その医師に内線電話で疑義照会をしました。

すると電話の向こうで医師が突然激昂し、「薬剤師のくせに意見する気か!」と怒鳴られたそうです。

もちろん、この薬剤師がとった行動は法律にかなったものであり、職務を全うするうえで適切な行為だったと言えます。

しかし、中にはそういった常識が通じず、自分の処方内容に文句をつけられたと感じる医師もいることも事実です。

こうした中で薬剤師像の理想と現実のギャップに苦しむ方は少なくありません。特に職務に対する責任感の強い真面目な薬剤師にとってはかなりきつい瞬間と言えるでしょう。

看護師とのトラブル

最近は薬剤師も病棟に出ることが多くなり、病室やナースステーションなどいろいろな場所で看護師と接する機会が増えています。

看護師には気の強い女性が多いこともあり、しばしば薬剤師との間でトラブルになることがあります。

私の知り合いの病院薬剤師も看護師から「注射薬を持ってきて!」など小間使いのような扱いを受けたり、怒鳴り散らされたりしたことがあり、大変つらい思いをしたと語っていました。

特にナースステーションでの業務中は気遣いの連続で、精神的にとても疲労するそうです。

しかし、病院内では看護師の方が薬剤師よりも圧倒的に数が多く、立場の強い存在です。

また、看護師は女性が多く、一度トラブルが発生すると悪いうわさが広まってしまい、関係修復が非常に難しくなることも多々あります。

こうした状況を考えると、円滑な関係を維持するためにもやむを得ず理不尽な要求に耐え忍ぶ場面もあります。

まとめ

ご覧いただいたように、一見すると華やかな病院薬剤師の仕事の裏にも数々のきつい場面が潜んでいます。

こうしたストレスとも闘いながら日々の業務をこなしていくにはスキルだけではなくメンタル面における強さが重要となります。

これから病院への就職を考えている方は、「知識やスキルを身に着けたいから」「患者さんに寄り添った医療をしたいから」などの単純な理由だけで勤まるものではないことを念頭に入れ、確固たる決意をもって臨んでいただきたいと思います。