「病院薬剤師は今後どうなって行くんだろう?将来性はあるの?」病院への就職を考えている方は誰もがこのような疑問を持たれていると思います。
そこで、今回は病院薬剤師の未来像について色々な角度から大胆に予想してみました!あくまでも予想ではありますが、一つの参考にしていただければと思います。
病院薬剤師の立場は安泰なの?
新卒や若い世代の薬剤師の方にとっては、長期間に渡って安定した勤務できるかどうかは大きな問題だと思います。
「一つの職場に末永く勤めながらお給料も順調に上がっていき、定年後は退職金とともに順風満帆な老後を過ごしたい!」そんな未来像を描いている方には、病院薬剤師の仕事が今後も存続していくかどうかは大いに気になるところですよね。
しかし、この点についてはそれほど心配する必要はないと言えます。
今後、社会の高齢化が進むにつれて病院のニーズは増々高まっていくことが予想されるため、病院薬剤師にも一定の需要が見込まれるでしょう。
また、最近はチーム医療が推進されるなかで薬剤師も病棟スタッフの一員として認知されつつあります。
がん専門薬剤師、栄養サポート専門薬剤師など様々な専門分野に特化した薬剤師も増えつつあり、調剤以外の分野でも地盤を確立しています。
こうした事情を考慮すると、医師や看護師の仕事が無くならないのと同じように、病院から薬剤師の姿が完全に消えてしまうと言うような事態は想定しにくいと言えます。
「定年まで病院に勤めたいけど途中で仕事が無くなったらどうしよう」などと悩む必要は今のところはなさそうです。
業務内容は変わっていく?
現在、薬剤師の業務内容は調剤などの対物業務から、患者さん対応を中心とした対物業務にシフトしつつありますが、病院薬剤師も例外ではありません。
医薬分業率が伸び、院外処方せんが増加するなか、病院薬剤師の外来調剤業務は減少しつつあり、この動きは今後も続くと予想されます。
また、テクノロジーの進歩に伴い調剤の機械化も進んでおり、全自動のピッキングロボットを導入している薬局も出始めています。
さらに、欧米で導入されているテクニシャン制度(「テクニシャン」と呼ばれる薬剤師資格を持たないスタッフが薬剤師に代わってピッキングなどの調剤行為を行う制度)を日本でも取り入れるべきという意見も出ています。
こうした動きが加速していくと、今後は調剤室内には最少人数の薬剤師だけを配置しておき、その他の薬剤師はすべて病棟業務を担当するようになる可能性もあります。
これに伴い、入院患者さんへの服薬指導、チーム医療やカンファレンスへの参加、医師の処方設計に対するアドバイスなど、薬剤師の業務はますます専門性が強くなっていくことでしょう。
このように病院薬剤師の業務内容は現在過渡期にあり、今後十数年で大きく変わっていくことが予想されます。
こうした時代の変化について行くことが病院薬剤師を続けていくうえでの必須条件となることは間違いないでしょう。
今後の病院薬剤師に求められるスキルは?
チーム医療が推進され、病棟業務の比重がますます大きくなっていく中、今後の病院薬剤師に求められスキルは、(1)コミュニケーション能力と(2)薬物治療全般についての高度な専門知識の2つであると言えます。
医療の根底にあるものは人と人とのつながり=コミュニケーションであり、これは薬剤師にとっても必須のスキルとなります。
かつて病院薬剤師の業務が調剤一辺倒だったころは、薬剤師は調剤室に籠って処方箋や薬と睨めっこしているだけで業務が成り立っていました。
しかし、2012年度の診療報酬改定で新設された病棟薬剤業務実施加算の後押しもあり、今後はますます薬剤師を病棟に配置する動きが加速していくと予想されます。
病棟では医師、看護師を初めとする医療スタッフや、患者さんとそのご家族など様々な人たちとの関わりが生じます。
こうした状況の中でも物怖じせずに堂々と意見を述べることができる対人スキルが必要になってくることは言うまでもありません。
また、医療チームの中での薬剤師の存在価値を示すためには薬物治療についての高度な専門知識も欠かせません。
今後は患者さんの病態に即した薬物療法を医師に提案しなければならない場面が増えていくと予想されます。
そのためにも、常日頃から自己学習に励み、薬物治療についての知識を深めておく必要があります。
学会や勉強会、研修会にも積極的に参加しなければならないため、今後、病院薬剤師を取り巻く環境はますます多忙になっていくことでしょう。
お給料はどうなるの?
「病院薬剤師の給料が今後、上がって行くのか下がって行くのか?」就職を考えている方なら大いに関心のあることだと思います。
結論から言うと、残念ながら今後、病院薬剤師の給料が今よりも大幅にアップする可能性は低いと考えられます。
現在、医療費は毎年1兆円程度の増加を示しており、2015年度には40兆円を突破しました。
中でも調剤医療費は医療費全体の伸びを上回るペースで増加しており、医療費削減は国全体の大きな課題となっています。
こうした流れを受けて病院を取り巻く経営環境もますます厳しくなっており、スタッフの給与もこのあおりを受ける可能性が高いと言えます。
また、平成20年に厚生労働省が開催した「薬剤師需給の将来動向に関する検討会」で配布された資料によると、薬剤師の総数と、病院・診療所に勤務する薬剤師の人数は以下のように予測されています。
●薬剤師の総数
383012名(2018年)
437342名(2028年)
●病院、診療所に勤務する薬剤師の人数
48547名(2018年)
48817名(2028年)
あくまで予測値ではありますが、ここから分かることは薬剤師の総数は今後10年間で5万人ほど増えるのに対して、病院・診療所に勤務する薬剤師の人数はほぼ変わらないということです。
これは将来的に、病院薬剤部の限られた就職口に対して多くの求職者が殺到する事態を意味しており、供給が需要を上回る買い手市場になることが予想されます。
こうした状況では病院側は安い給料でスタッフを採用できるようになるため、病院薬剤師全体の給与相場が押し下げられる可能性が高くなります。
まとめ
ご覧にいただいたように、今後、病院薬剤師を取り巻く環境は徐々に厳しさを増していくことが予想されます。
現状に満足し、努力を怠る薬剤師は最先端の知識を必要とする病院での生き残りは難しいでしょう。
病院薬剤師を志望される方はこうした点をしっかりと踏まえたうえで、将来に向けて万全の備えをしておくことをお勧めします!