病院薬剤師には国公立病院で働く公務員薬剤師と民間病院で働く非公務員薬剤師の2種類があります。

同じ病院薬剤師でも公務員と非公務員では給与や待遇面で様々な違いがあり、応募前にこれらの違いをしっかりと把握しておくことはとても大切です。

そこで、今回は病院薬剤師を志望される方のために両者の違いを徹底比較してみました!

身分の比較

国公立病院で働く薬剤師は公務員のため、その安定性は大きなメリットと言えます。

公務員薬剤師は原則として病院側の都合によって解雇されることがなく、定年まで安心して勤め上げることができます。安定志向をもち、堅実な人生設計を描いている方には特にお勧めと言えるでしょう。

これに対して、非公務員薬剤師にはこうした身分の保証がありません。

現在は全国の病院の約4割が赤字であると言われており、自分が勤めている職場でも将来的に経営難によるリストラが断行されないとも限りません。

特に、経営状態の厳しい病院に務める非公務員薬剤師は不安定な立場で働くことを余儀なくされます。

業務内容の比較

公務員薬剤師も非公務員薬剤師も同じ病院薬剤師であるため、業務内容そのものに大きな違いはありません。

ただし、務める病院の規模の違いにより仕事内容に多少の差が出る場合があります。

一般に国公立病院は総合病院のため幅広い診療科を有しています。したがって、処方内容も広範囲に渡り、薬剤部で取り扱う薬の種類も膨大になります。

このため、国公立病院で働く薬剤師はどんな科目の処方箋にも対応できるだけの幅広い知識や調剤技術が要求されることになります。

また、病床数に比例して病棟業務も増えるため、薬物治療についての広範な知識も必要となります。

これに対して民間病院は大手の総合病院から単科病院や個人病院までまちまちであり、規模に応じて業務内容も変わってきます。

小規模病院では薬剤師は調剤しか担当しないところもあるため、人によっては物足りないと感じるかもしれません。民間病院に応募する際には業務内容を特に良く確認しておくことが大切です。

初任給の比較

国公立病院の薬剤師は公務員のため、初任給は法律により一律、月給20.8万円(年収約300万円)と定められています。

これに対して、民間病院は平均すると月給25万円(年収約350万円)程度であり、初任給に関しては民間病院が優っているといえます。

定期昇給の比較

国公立病院で働く薬剤師には公務員ならではの定期昇給があります。

毎年、月額6~7千円程度の着実な昇給が見込めるため、初任給こそ低いものの、勤続年数にしたがって収入は徐々に増えていきます。

長期間務めていれば年収は600万円程度まであがり、役職次第では800万円に達することもあり、かなりの高待遇と言えます。

これに対して民間病院の昇給幅は明らかに見劣りしており、中には昇給が全くない病院もあります

初任給は国公立病院に比べて多少は高いものの、それ以降の給与の伸びしろがそれほど期待できないため、長期勤務を前提にすると公務員薬剤師に分があると言えます。

民間病院に応募する方は、初任給の高さだけに目がくらむことのないように注意してください。

ボーナスや退職金の比較

国公立病院に勤務する公務員薬剤師の場合は、年額80万円ほどのボーナスが支給されると言われています。公務員であるため支給額は安定しており病院の経営状態によりカットされるというようなことはありません。

また、退職金についても35年以上勤めあげれば1500万円以上の金額が支給されるため、安定した老後の設計ができます。

一方、民間病院ではボーナスや退職金の支給額は病院により大きな幅があります(中にはボーナスも退職金も支給しない病院もあります)。このため、公務員薬剤師と比較すると収入の見通しが不安定であると言えます。

副業の可否

国公立病院で働く薬剤師は公務員のため原則として副業が禁止されています。したがって、「休日も働いて年収1000万円をめざしたい!」などと考えている方には向かないでしょう。

これに対して民間病院は就業規則で副業が禁止されていなければ、管理薬剤師以外はドラッグストアや調剤薬局でダブルワークをすることも可能です。

薬剤師はアルバイトでも時給の相場が2000~2500円と高いため、副業も併せて高収入を手にしたいと考える方は民間病院の方が適すると言えます。

転勤の頻度を比較

国公立病院の大きな特徴として転勤があげられます。転勤は国公立病院で働く以上は、通常、避けて通ることができません。

移動先は同じ関東圏内や関西圏内の病院というように、それほど遠隔地に飛ばされることはないようですが、引っ越しを伴うこともあります。

通常、3~5年に1回の頻度で命じられ、転勤の通達から辞令の交付まで数日しかないことも多いため、かなりバタバタします。

転勤先については本人の希望もある程度は考慮されますが、必ずしも希望どおりに行くとは限りません。家庭がある方は単身赴任になることもあり、時として退職の原因にもなります。

国公立病院への就職を考えている方は、この点だけはしっかりと頭に入れておきましょう。

これに対し、民間病院では転勤の可能性はかなり低いと言えます。たとえ系列の病院があったとしても異動させられることは滅多にないため、同じ職場に長く留まりたい方には向いていると言えます。

まとめ

総合的に判断すると病院勤めに関しては公務員薬剤師に軍配が上がると言えそうです。

しかし、国立・公立病院の公務員薬剤師はメリットが多い反面、薬剤師の募集人数も民間病院と比べて少なく、非常に競争率が高くなっています。

いずれに応募するにせよ、後で後悔することのないように両者の違いを良く把握したうえでしっかりと検討することが大切と言えます。