かかりつけ薬局というのは、その名前のとおり「かかりつけ」の薬局のことです。いつも利用する薬局ということですね。かかりつけ薬局は患者さんが選ぶものであり、薬局が「うちはかかりつけ薬局ですよ」と宣言するものではありません。

かかりつけ薬局となり得るのは、面分業と言われている薬局です。どの医療機関に受診したとしても処方箋をちゃんと受け付けてくれる薬局でなければ、かかりつけにはなれません。この薬局ならどこの処方箋でも受け付けて貰えるからここに行こう、と患者さんの意思で決めるのがかかりつけ薬局となります。

厚生労働省が推奨している

2016年現在、厚生労働省は、かかりつけ薬局を推奨しています。2015年からその動きが活発になってきており、どの都道府県の薬剤師会のホームページを見てみても、かかりつけ薬局についての説明がありますし、かかりつけ薬局となり得る薬局の一覧があるところもありますね。

厚生労働省は、門前薬局メインとなっている現在の薬局業界に疑問を投げかけています。薬局は元来、地域や患者さんと密着した医療を行うべきだと考えられているため、病院に密着している門前薬局が薬局の数のほとんどを占めているのはいかがなものかということです。

その結果が、かかりつけ薬局というわけですね。

かかりつけ薬局のメリットと薬剤師の仕事

かかりつけ薬局のメリットとしては、患者さんひとりひとりについて把握しやすいということです。それによって、薬の重複使用・飲み合わせなどによる副作用が発生するのを防ぐことができます。患者さんの常備薬なんかも把握しておけるため、服薬指導もしやすいですね。

また、薬歴がしっかりと管理されるため、患者さんがいつでも服薬指導を受けられるようになります。相談窓口としての薬局という役割を果たすことになるということです。また、OTCの情報などについても提供しやすくなります。

患者さんにとって有益な情報を提供することができる薬局になることで、患者さんからの信頼を得ることもできます。固定客がつくことになるので、経営も比較的安定してくるでしょう。

個人の薬歴を一括で管理する

かかりつけ薬局は、患者さんの薬歴を一括管理することが求められます。患者さん個人の薬歴を一括で管理しておけば、先ほど述べたように副作用・重複調剤を防ぐことができますし、残薬問題も解消されるのです。

かかりつけ薬局で働くということは、患者さんひとりひとりに対しての管理業務というのが増えることになります。薬剤師としても、同じ患者さんを相手にすることが多いため、服薬指導もしやすく、仕事が楽になるでしょう。

複数科目へ対応する

同じ患者さんを相手にするため、服薬指導がしやすく、仕事が少し楽になると述べました。しかし、その反面処方傾向についてはつかみにくくなります。かかりつけ薬局は面分業薬局です。複数科目の処方箋に対応することになります。

処方箋科目が限られている門前薬局とは違い、さまざまな医療機関の処方箋を受けることになるのです。比較的近いところにある医療機関の処方箋に関しては予想がつくでしょうが、ときには遠くの医療機関の処方箋を持ってくることもあります。

「どこで診察してもらっても、ここに持っていく」と決めている人は、たとえ遠方で診てもらったとしても、同じ薬局に持っていくものです。一度習慣化してしまったものが変えられないのと同じですね。そのため、予想だにしないところからの処方箋が来たとしても、臨機応変かつ柔軟に対応しなければなりません。

患者さんと密にコミュニケーションをとる

門前薬局だと、患者さんとコミュニケーションをとるのは服薬指導くらいのものでしょう。しかし、かかりつけ薬局は健康相談やOTC薬の相談など、幅広い相談も受け付けなければならなくなります。病気になったときだけではなく、病状が改善した後であっても、患者さんの健康サポートをするのです。

そのため、薬剤師は患者さんひとりひとりと密にコミュニケーションをとることが求められます。かかりつけ薬局が注目されているのは、そういったところがあるからです。かかりつけ薬局は、薬局が本来あるべき姿に回帰するためのきっかけとなることが求められています。