調剤薬局では患者さんとの時間を多く取れないため、単純に日々の業務をこなしていても信頼関係を築くことは難しいものです。
これが病院であるならば、患者さん自身が初めからある程度の信頼を持っているために発生しにくい問題ですが、調剤薬局ではそうはいきません。
さて、調剤薬局での信頼関係は、どのように築いていくべきなのか、少し考えてみましょう。
患者さんの薬剤師に対する認識は?
この問題は患者さんの年代によって大きく分かれますし、個人的な思想にも大きく左右されます。薬剤師についてどの程度の知識を患者さんが持っているかによって、スタート地点から異なってくるのです。
現代では薬剤師は薬のエキスパートであり、健康相談なども請け負うことのできる医療人と認識してくださる方も多くなりました。
ですがそれも最近のことで、古い知識の患者さんであれば、薬剤師は薬局で薬を売っている人程度にしか考えていないことがあります。ただの売り子から、この商品はこうやって使うんですが、どんな目的で買うんですか?と聞かれて不愉快に思わない人はいないでしょう。
まずはスタート地点の確認、これが信頼関係を築く第一歩です。
患者さんが薬局で求めているもの
薬局で提供するサービスはただ薬を渡しているだけではありません。
- 薬を通して患者さんに適切な医療を提供できているのか判断
- 場合によっては病院との意見交換も必要
- 医療の最終関門として医療過誤を防ぐ役割
- 通院できない患者さんに在宅での薬学管理
このように薬局の役割は豊富です。例をあげればキリがありません。
さて、この様々な仕事を薬局に訪問してくれている患者さんの中で、どのくらいの人が理解してくれているでしょうか。ほぼ知られていないと言えるのではないでしょうか。
一般的な患者さんが求めているものは、ただ一点。処方箋通りの正しい薬を素早く渡すことです。
多種多様なサービスではなく、この最低ラインをクリアすることで、初めて患者さんはこちらの話に耳を傾ける余裕を持ってくれます。
独りよがりに自分のやりたいように仕事をするのではなく、求められているものに答えるように心がけましょう。
患者さんの観察で攻略の糸口を探す
患者さんと会話をできるようになっても、薬の話だけしていてはいけません。それでは、いつまでたっても平行線の付き合いにしかならないのです。何気ない日常会話も、すべて患者さんとの距離を詰めるための糸口になるのです。
たとえば、高齢の患者さんが小さなお子様を連れて来局したとしましょう。「かわいいですね、何歳になるんですか?」など、軽く話すだけでも気分がよくなるものです。
この薬剤師さんは、親しみやすい人だなと思ってもらえれば、そこからさらに進んだ信頼関係を築くことができるでしょう。
患者さんとの信頼関係を崩さないように
信頼関係を築くことと、慣れあいになってしまうことは似て非なるものです。今回の記事をもとに患者さんとの距離感を詰めていくと、薬剤師と患者さんという関係ではありえない問題が発生してしまうことがあります。
あの患者さんならわかってくれるからと説明もなしに順番を変更したり、薬の不足について謝罪もなしに配達するのでお願いしますなどと話したり、通常の患者さんにはしない行動を薬剤師が選択してしまうことがあるのです。
節度を持った関係性で、培ってきた信頼をなくさないように気を付けなければなりません。患者さんに甘えることのないように注意しましょう。
コミュニケーションスキルは必須の技能
薬局薬剤師にとってコミュニケーションスキルは必須のものとなりました。最低限度失礼のないようにすることは誰でもできますが、その先に信頼関係を築くのは誰もができることではありません。
患者さんから選ばれるような薬剤師になるために、薬学的な知識とともにコミュニケーションスキルも磨いていきましょう。