「整形外科の門前薬局は楽だ」という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
確かに、整形外科であつかう薬剤は種類が少ないですし、軟膏や散剤・水剤の混合も少ないイメージがあります。
では、就職先としてはどうなのでしょうか?
そこで、整形外科の門前薬局への就職に興味を持っている方のために、整形外科の門前薬局の特徴と求人選びのポイントをまとめてみました。
整形外科の門前薬局の特徴
「痛み」を抱える患者さんが来るところです
整形外科の患者さんの多くは痛みを抱えていますが、見た目は元気な患者さんが多いです。
しかし、足腰に痛みがあって立ったり座ったりが難しい患者さんもいます。関節リウマチで、関節の変形がある方もいます。
私自身、待合スペースでずっと立っている患者さんに椅子を勧めたところ、「座ると立てなくなるから」とやんわり断られたことがあります。
また、若くて元気そうな患者さんのお名前を呼んだところ、関節リウマチの活動期で痛みがひどく動くのもままならず「痛いから投薬台まで行けない」と泣かれてしまったことがあります。
整形外科の門前薬局では、患者さんがどんなに元気そうでも「痛み」への配慮を忘れてはいけないと思います。
できれば、患者さんが薬局に入ってきた瞬間から様子を見守り、痛みの具合に配慮しながら業務を行いたいものです。
併用薬や使い方に注意が必要な薬も多い
整形外科で使われる薬には、しっかり服薬指導しなければならない薬が数多くあります。
整形外科で頻繁に処方される痛み止めやH2ブロッカー、PPIは他科でも処方される可能性があります。そのため、重複投与に注意が必要です。
また、ビスフォスフォネート製剤は顎骨壊死の副作用がありますし、歯科治療の内容によっては服用を中止しなければならないこともあります。
その他、ビスフォスフォネート製剤は飲み方に特別な注意が必要なので、コンプライアンス維持のためにも服薬指導が欠かせません。
さらに、服用日に注意が必要な薬剤もあります。メトトレキサートや一部のビスフォスフォネート製剤は決められた服用日に薬を服用しなければなりません。
特にメトトレキサートカプセルは、服用日を誤ると重篤な副作用が生じる可能性があります。
最近は、デュロテップMTパッチやトラムセットなどのオピオイドや、神経障害性疼痛治療薬のリリカの処方も増えています。
これらの薬は、使い方や副作用についてしっかり説明をしておかないとコンプライアンス不良につながる可能性があります。
特にデュロテップMTパッチは、湿布とは違い痛みのある場所に貼る薬ではないこと・大量に貼ってはいけないこと・他人へあげてはいけないこと等もしっかり伝えておく必要があります。
整形外科の治療全般にかかわる幅広い知識が必要
整形外科の患者さんの中には、処方せんからは読み取れない内容の治療を受けている患者さんが多数いらっしゃいます。
例えば、リハビリを受けている方もいますし、関節リウマチの治療のためにレミケードなどの生物学的製剤の点滴を受けている方もいます。
また、骨粗しょう症治療のために注射を受けている方もいますし、膝関節などにヒアルロン酸を注射している方もいます。
服薬指導時にこれらの情報を全て聞き出すのは難しいですが、患者さんから治療内容について色々質問をされることもあります。
そのため、調剤にかかわる知識だけでなく、整形外科の治療全般にかかわる幅広い知識が必要となることもあります。
コミュニケーションスキルが必要となる場面が多い
整形外科の患者さんは、骨折などで短期間のみ通院する方もいますが、慢性期で経過の長い患者さんも多くいらっしゃいます。
そのような患者さんの処方はいつも同じ内容であることが多く、服薬指導がしづらいこともあります。また、処方内容に変化がないと話を聞いてくれない患者さんも少なからずいらっしゃいます。
しかし、処方内容が変わっていなくても患者さんの症状は変わっているかもしれませんし、他科受診している場合には併用薬が変わっていることもあります。
そのため、処方内容が変わっていなくても患者さんから話を聞き出したり、たとえ湿布だけの処方でも話を聞いてもらうというコミュニケーションスキルが必要となります。
整形外科の門前薬局の薬剤師求人選びのポイント
未経験者の受け入れ体制をチェック
整形外科で使われる薬は他科に比べて種類が少ないですし、散剤や水剤も少ないですから高いレベルの調剤スキルは必要とされません。
だからといっていきなり一人で業務を行うのは不安なものです。
したがって、調剤未経験者の受け入れ体制が整っているかどうかを必ず確認しましょう。
整形外科の門前薬局は処方せん枚数が多めでも比較的余裕のあることが多いですが、処方せん枚数に対して常勤薬剤師数が十分にいる薬局を選びましょう。
さらに、業務に慣れるまでは複数人で監査を行うようなフォロー体制がある薬局がおすすめです。
勤務体制も確認
整形外科の若い患者さんは、学校や会社が終わってから受診される方も多いです。また、点滴やリハビリ後に薬をとりにみえる方も多くいらっしゃいます。
そのため、残業が発生する可能性があります。
また医師が複数人いる場合には、曜日によって患者さんの人数が大きく変わることもあります。
したがって、休日などの他、残業の有無、処方せん枚数の多い曜日がないかなどをチェックする必要があります。
なお、点滴やリハビリは予約制であるケースも多いので、ある程度のパターンは決まっていることが多いです。
まとめ
整形外科の門前薬局は、取り扱う薬剤の種類は少ないですし、軟膏や散剤・水剤の計量・混合などの調剤スキルはあまり必要とされないので、調剤未経験者でも就職しやすい職場と言えます。
しかし、使用に注意の必要な薬剤も多いですし、リハビリや注射薬などを含む整形外科に関する幅広い知識が要求されることもあります。
また、患者さんとのコミュニケーションを上手にとることも必要です。
高齢化に伴い、整形外科を受診する患者さんは増えています。整形外科を受診される患者さんの多くは、薬局にも長期間通うこととなります。
そのため、整形外科の門前薬局の薬剤師の需要は高まることが予想されます。
この機会に、興味のある方は整形外科の門前薬局への就職を検討してみてはいかがでしょうか?
その経験は今後もきっと役に立つと思いますよ。