「ドラッグストアって、薬剤師には販売のノルマがあるの?」
これは筆者がドラッグストアに勤務していた際、調剤薬局勤務の同級生に実際に質問されたことです。
答えは「会社によって異なりますが、概ねイエス」でした。
「ドラッグストアって、お客さんの症状に合わせて薬を提案するのが普通だから、何をいくつ売ったとかそういうのって不適切じゃないの?」と思う方もいらっしゃると思いますし、筆者もその考えには賛同しています。
しかし、ドラッグストアも企業ですので、ある程度の利益は追及しなければなりません。
今回は、筆者がドラッグストアに勤務していたころに経験した、勤務薬剤師に課されるノルマやそれに伴う業務について解説していきます。
ノルマって、薬を売った数のこと?
単純に、ノルマが販売数や販売金額の数字の場合もあると思います。
しかし、会社側がノルマと大きな声では言えないけれど、医薬品や健康食品のその店舗の売り上げが、勤務薬剤師のボーナスや昇進に関わっているケースのほうが多いです。
その場合、目標値は事前にわかりませんし、そもそも数値化されて設定されていないこともあります。
「この人のお店は高い商品がたくさん売れているな、きっと薬の説明を頑張ってくれているんだな。」と知らず知らずの内に評価を得ていることがあるでしょう。
目に見えるノルマで筆者が経験したことのあるものは、いわゆる「推売品」です。
この推売品を月にいくつ売ったか、というのを自分で数えて、上司に申告します。
推売品を売ったと言っても、自分のお店全体の売り上げではなく、自分がカウンセリングして販売したもののみをカウントします。
このカウントの数で、他店舗の薬剤師や同期たちと比較され、次年度の収入やボーナスに差が出るシステムでした。
筆者が経験した企業だけでなく、プライベートブランド(自社で企画または製造を行っている商品群)を持っている企業ならどこでもあり得ることです。
推売品って何?なんで会社はそれを売りたいの?
会社がそこまでして売りたい「推売品」とは一体どのようなものなのでしょうか。
先ほど申し上げた通り、その会社のプライベートブランドがある場合、利益率が高いため推売品になりやすいです。
プライベートブランドが無い場合は利益率の高い商品が該当します。
利益率の高い商品には、有名なブランドである「ルル」「パブロン」「アレグラ」などは該当しません。
それと同じ成分の、他のメーカーが作った物が該当しやすいです。
医療用医薬品でいうジェネリック医薬品という考え方に近い商品です。
これらの医薬品は、有名メーカーよりも安く仕入れられ、成分は有名メーカーのものと大きく変わらず、効き目は同程度のものがほとんどです。
お客さん目線でも同じ効き目で値段が安価なので、十分メリットのある商品ですが、知名度が低いのでなかなか売れません。
そのため、薬剤師や登録販売者が意識的に販売する必要があります。
「利益率が高いから」推売品に指定しますが、表向きは「よく効いてお値打ちな、患者さんにメリットのある商品」として、たくさん売ってくださいね、と従業員に通達が回ります。
会社によっては、相談されたら必ずこれをおススメするように、と強く言われることもあります。
「かぜならどんな症状でもこれをおすすめしましょう!」と本末転倒なことを言う会社もあります。
いくらお得でも、お客さんには商品を選択する権利がありますし、症状に合わせてお薬を選ぶことは当然です。
薬剤師目線でも消費者目線でも、あまりごり押しで販売するような会社を選択しないよう、注意していきたいものです。
ノルマを達成できないと、なにかペナルティがあるの?
これらの推売品が目標通り販売できなかったからと言って、特に薬剤師にペナルティはありません。
「どこの店の誰がどのくらい販売した~」と、社内でランキングが発表されることがありますが、そのランキングが低かったからといって減給や降格があるわけではありません。
しかし、推売品をより多く販売した店舗や販売員は、評価が上がりボーナスが多めに支給されたり、次年度の月給の上り幅が大きくなったりとメリットはあります。
ドラッグストアに勤務する場合は避けて通れないイベントになるでしょう。
まとめ
今回はドラッグストアに勤務する薬剤師にどのくらいのノルマが課されるかについて解説させていただきました。
明確に「ノルマ」という言葉が存在しないことがほとんどですが、会社が売って欲しい商品を売ることが実質ノルマになっていることが多いです。
お客さんは、自分や家族の症状が心配でドラッグストアを訪れています。
本当に売ってあげるべきは、お客さんが望む商品であり、会社の売りたい商品ではないのです。
薬剤師として仕事をしている以上、症状に合わないお薬をおススメしたくないものです。
推売品やノルマのごり押しをする会社は選ばないように転職するのが、薬剤師目線では正しいことかもしれません。
担当者にしっかり確認して、自分の納得できる会社を選ぶようにしましょう。