病院で働いている薬剤師たち。苦労して何とか内定を貰ったという人も少なくないでしょう。

しかし、どんなに苦労して入ったとはいえ、病院から転職する薬剤師が多いのも事実です。

周りからは転職するなんてもったいない、なんて言われることもありますよね。そのため、なかなか周りの人に転職について相談するのは難しいことが多いのです。

ということで、ここでは転職を考えている病院薬剤師向けに「どういう理由で転職したの？」「どうやったらうまく転職できるの？」など、ちょっと聞きにくい転職事情についてご紹介していきます。

ぜひこちらを参考にしてみてくださいね。

病院薬剤師から転職した人はこんな理由で転職している

転職したいけど、こんな理由で転職して良いのかな？他の人はいったいどんな理由で転職しているの？なかなか聞けない転職の理由って何なのでしょうか。

  • 人間関係がこじれた
  • キャリアアップをしたい
  • 労働環境が悪く働きづらい
  • 当直が有り、体力的にきつい
  • 患者さんと接する時間があまりない

薬剤師の仕事は狭い空間の中で毎日行うものなので、人間関係のこじれが起きると業務への支障が凄いんですよね。常に息が詰まっているような感じがして、とてもじゃないけど耐えられるものではありません。

そのため病院薬剤師の転職理由の中でも人間関係はトップに挙がります。他にも当直で生活が不規則になって体がしんどい、残業が多いのが嫌だ、もっと年収が高いところで働きたいといった理由もあります。

そして意外にも病院薬剤師の転職理由で多いのが「患者さんと話をする時間がない。」というものです。

この声は特に急性期の病院で働いている薬剤師から頻繁に挙がります。調剤して監査して投薬して…をひたすら繰り返す毎日に次第に疑問を抱くようになってしまうんですよね。

勤務時間のうち、調剤室にこもる時間が圧倒的に多くて、患者さんのいる病室にゆっくり足を運ぶことがなかなかできないことが多いのです。

病院から転職したい薬剤師の転職先の選択肢一覧

病院から転職する際、どこに転職しようか迷いますよね。ここでは転職先によって環境がどう変わるのかを見ていきましょう。

病院から調剤薬局

当直や拘束時間の長さがきつくて病院から転職したいと考えている人が病院薬剤師には多くいます。また、転職しても調剤業務に関わりたいと考える人がほとんどです。そうなると必然的に転職先の候補に挙がるのが調剤薬局になるのです。

調剤薬局のシフトはほとんど毎日決まった時間となっており、しかも当直はありません。

これだけで体力面ではかなり楽になります。調剤薬局へ転職した多くの薬剤師が、体力的に楽になったと感じているほどです。

場所によっては営業時間が長い調剤薬局もありますが、それでもせいぜい夜の20時までとかですので帰りが極端に遅くなるということもありません。

病院だと就業時間が終わってから薬歴を書いたり、勉強会をしたりするので意外と帰りが遅くなりがちですよね。調剤薬局ではそれがほとんどないので、就業時間が終わればすぐに帰れることが多いのです。

さらにチェーンの調剤薬局に転職をすれば、万が一何だかここの職場が合わないなってなったときでも異動することができます。病院で異動というのはまずありませんよね。異動ができるというのは実は物凄くありがたいことなんですよね。

異動という逃げ道を作れるため、自分を追い詰めることもなくなり精神的にかなり楽になります。

もちろん、最初に配属された店舗でうまくやっていければ、それが一番です。患者さんとの距離がより縮まるというのもありますね。

病院は流れ作業で監査が終わった薬からどんどん服薬指導に入っていきます。調剤薬局でもその流れはもちろんありますが、「この患者さんは私が担当しているの。」なんてことも時にはあります。

また、病院よりもゆっくりと患者さんと対応ができるため踏み込んだ服薬指導ができます。

⇒病院薬剤師から調剤薬局に転職！～難易度、年収の変化、注意点などを解説～

病院からドラッグストア

病院薬剤師の悩みの1つが「年収の低さ」です。病院の平均年収は400万円前後であるのに対し、ドラッグストアは500万円前後もあります。

初任給で600万円を超えるところすらあります。このようにドラッグストアの年収は病院よりも圧倒的に高いのです。

ドラッグストアに転職するだけで100万円以上も年収をアップさせることが可能です。病院で地道にキャリアアップを目指すよりも圧倒的に早く年収を上げられますね。また、ドラッグストアは比較的昇給しやすい職場です。

仕事の能力によりランク付けをしており、ランクが上がるごとに年収も上がっていきます。1つランクが上がるごとに30万円から100万円くらい年収が上がります。さらに店長になれれば店長手当も年に100万円ほど貰えます。

入社して4年から5年目で店長になり、入社6年目ごろまでには早い人だと2回ほどランクが上がります。病院薬剤師の年収はトップの薬剤部長にならない限り昇給があまりありませんが、ドラッグストアには昇給のチャンスが常にあるのです。

入社6年目で年収が最初のころより200万円も上がった薬剤師も私の身近にはいました。

しかも、ドラッグストアへの転職の難易度はかなり低め。「よっぽどのことがなければ落とされない。」と言われているほどなので忙しい病院薬剤師でもスムーズに転職活動を行えます。

病院で働いていたときに習得した知識を生かしてお客様と接することができるので、周りからも「薬のことを良く知っている薬剤師だ！」と思ってもらえる状況が多々訪れます。病院だと薬剤師の地位って低いことが多いですよね。

しかし、ドラッグストアでは薬剤師が不足しているのもありますし、患者さんから薬剤師を指名されることもあります。

薬剤師が必要とされていると実感できる場面が多々あるのです。また、広々とした店内で働けるため、病院の調剤室のような狭い空間が苦手な人でも働きやすい環境です。

病院ではなかなか扱いのないOTC医薬品の知識も自然と付いていきます。他に健康食品や化粧品、日用品など幅広い知識の習得も可能です。

⇒病院からドラッグストアに転職したい薬剤師の求人選びのポイント

病院から企業

企業の年収も病院と比べるとかなり高いですね。開発職や研究職そしてMRなど、さまざまな仕事がありますがどの職種も高年収が期待できます。入社してすぐの年収は500万円から600万円ほどですが、経験を重ねていけば年収が大台の1000万円に乗ることも珍しくはありません。

外資系の製薬会社では最高年収1600万円など、病院で働いていたときとは考えられないほどの年収が提示されることも。

そのため家族が増えた薬剤師が年収アップのために目指す場合が多い転職先でもあります。加えて外資系であれば、眠らせていた英語のスキルも存分に発揮することができます。

企業と言えばCROやCRAという道もあります。病院にいたころとは違い、治験というまた違った角度から医薬品に関わることもできますね。自分が開発に関わった薬が実際に医療現場で使われるようになり、患者さんの役に立っているところを見ると、かなりのやりがいや嬉しさを感じるものです。

ルーチンワークで業務をこなすことの多い病院ではそう味わえるものではないでしょう。せっかく病院に就職したのに調剤ばっかりで、病棟で患者さんと話す時間があまりなくやりがいを感じられないと嘆く病院薬剤師は多いものです。努力を自分の目で見て確認できるというのは他の薬剤師業務ではなかなかありません。

⇒病院から企業薬剤師に転職！求人選びのポイント、必要なスキルなどを解説

病院からメディカルライター

メディカルライターという職種はあまり聞きなれませんが、少しずつ転職先としても認知されてきています。健康や医療に関する情報を書いていくお仕事です。薬剤専門の雑誌に載せる記事や新薬の添付文書の文面の作成などを行います。

年収は400万円くらいからの募集が多いですが中には500万円や600万円を超すものもあります。

まだまだメディカルライターの需要が高いこともあり、経験を積み実力を付けていくことで早ければ３年ほどで年収800万円ほどにまで上り詰めることが可能です。

年収で伸び悩む病院薬剤師には十分アリな職種でしょう。そしてメディカルライターの何よりの強みは「独立できる」こと。病院で独立するというのはまず医師でもない限り無理な話ですよね。

しかしメディカルライターはそれが可能なのです。経験を積めば自分１人でライターとして生活できるようになります。会社に出勤する必要もなくなりますね。

働きやすさを重視している企業だと中には「自宅勤務可」というところもありますので、勤務時間を短くしたい、渋滞や人ごみに飲まれながら毎日通勤するのが嫌だという人にはとても向いています。通勤に関する不満がある人にはかなり良いのではないでしょうか。

病院から他の職場に転職するなら『薬剤師専門の転職サイト』が必須

転職活動を自分１人で行うのはおすすめしません。何事もプロに任せた方が安心するように、転職活動もプロの力を借りるのが一番良いのです。しかし、なぜ転職サイトを使った方が良いのでしょうか。

転職前と変わらないくらいキツイ職場を避けられる

病院薬剤師が転職を考える理由の上位に常にランクインする体力が持たないなどの声。転職してもなお残業が毎日のようにあったり勉強会が多くてすぐ帰れなかったりなどのようなことが続いてしまっては意味がありません。なぜ転職をしようと思ったのか、その原因となるものを排除した転職先を探さなければならないのです。

残業ばかりの企業がご丁寧に「うちは残業が多いです！」なんて書いているわけはないので、自分１人で求人を探している限りは転職先の実態までは把握できません。そこで裏事情とも言える企業の本音を転職サイトのコンサルタントから入手してもらい転職活動に生かすのです。

仕事で忙しくてもサポートしてもらえる

病院で働きながら転職活動をする以上、転職への時間があまり取れないということは最初から目に見えています。働きながら多くの求人の中からいくつかピックアップして、時には見学に行って、面接日の日程を調節して…朝早くから夜遅くまで働いている病院薬剤師にはとても厳しい状況です。

当直の明け日はお昼過ぎまで睡眠で潰れてしまうのでさらに時間が取れません。

そんな忙しい病院薬剤師を転職サイトは徹底的にサポートしてくれます。あらかじめ条件を伝えておけば良い求人が見つかったときにメールで送ってくれますし、面接日の調整もしてくれます。転職サイトが転職をしている薬剤師の手となり足となり全面的にサポートしてくれるので、働きながらでも効率的に転職活動を進めることができます。

【現状別】病院から転職したい薬剤師にアドバイス

転職する理由は人それぞれです。転職の目的を叶えるためにはその目的に合わせた転職活動をしなければなりません。

病院から転職したい＋「子育てと両立したい」

子育てと両立したい人は、転職先の薬剤師にも同様に子育てをしながら働いている人がいるかどうか確認しましょう。すでにそういった実績がある職場であれば子育てをしながらでも働きやすい環境のベースが既にできあがっています。

育児短時間制度の利用もしやすいですし、他の薬剤師と協力しながら仕事ができる環境が整っています。急に仕事を休まなくてはならなくなっても「お互い様」と思ってくれるので影で嫌味を言われることもなく、必要以上に周りに気をつかうことも減ります。

託児所を備え付けている職場もあるので、そういったところも探してみると良いでしょう。他に、地域の子育て支援なども行っている職場も良いですね。会社自体が子育てに理解があるので、ママ薬剤師でも働きやすい制度が充実している場合が多いです。

病院から転職したい＋「収入アップしたい」

薬剤師の中では低い年収に分類される病院薬剤師。どうせ転職するならできる限りの収入アップを目指したいところです。薬剤師の年収は都心部よりも田舎の方が高い傾向にあります。本当に人が集まらなくて困っているようなところはいきなり「年収700万円から！社宅つき！」のようなとんでもない求人を出しているところもあります。

自宅から通いやすいところだけでなく、少し範囲を広げて探してみると高年収の求人を見つけられるかもしれません。また、収入アップしたい人こそ転職サイトをしっかり活用してほしいところです。こちらから特に企業や転職サイトに何も言わなくても転職サイト側が企業と年収の交渉を行ってくれることがほとんどです。この交渉により年収が数十万円変わってきます。

病院から転職したい＋「スキルアップしたい」

どんどん経験を重ねて上の役職へ就きたい人は教育カリキュラムがしっかりしているところを選びましょう。教育カリキュラムがしっかりしているところは、もちろんその分仕事内容も覚えやすく仕事の評価基準もきちんと設定されていることが多いです。

「こうすれば評価が上がる」というのが分かるので、それをクリアできるように頑張っていけば少しずつ上へ上り詰めることができます。そのため、調剤薬局への転職を考えているなら大手の調剤薬局がおすすめです。大手ほど薬剤師の教育に力を入れているので成長しやすいのです。

エリアマネージャーにまでなることができれば年収は1000万円も期待できますよ。他に自身お知識を高める意味でも勉強会の有無を調べてみるのも良いですね。勤務時間の前後ではなく時間内に勉強会を取り入れてくれる職場もあるので、プライベートを重視している人でも気軽に学ぶことができます。

病院から転職したい＋「雰囲気の良いところで働きたい」

毎日働く職場の環境は良いに越したことはありません。年収や残業などの他の条件がいくら良くても周りの環境が悪ければ仕事はすぐに苦痛になってしまいます。しかし、職場の雰囲気が転職前に分かることなんてまずないですよね。そのため、ここでも転職サイトを利用するのをおすすめします。

「あそこの薬局はすぐに辞める人が多い。」だとか「あのドラッグストアはみんな長く働いている。」などのそこの職場に実際にいないと分からないような情報を転職サイトは持っています。

貰える情報は貰ったもん勝ちです。転職活動もなかなか体力を消耗しますし精神的にも疲れが来ます。1度の転職で成功させるためにも転職サイトを使い倒すくらい利用する気持ちでいきましょう。

病院から転職したい＋「患者さんとの時間を確保したい」

忙しい病院ほど患者さんの病棟まで足を運ぶのが難しくなります。患者さんともっとコミュニケーションを取れる職場に転職したいという人は少し田舎にある調剤薬局、もしくは規模が比較的大きくない調剤薬局をおすすめします。

このような薬局は地域に根付いた運営をしていることが多く、患者さんと薬剤師がまるで家族のように薬局で話しこんでいる姿もたびたび見かけます。「何かあったらうちに来て。」と患者さんの家の鍵を預けられている人もいます。

患者さんに薬を渡して終わりではなく、それ以上の関係を築きながらしっかりと薬や病態の管理ができますよ。他にCRCも治験を通して患者さんと深く関わることができます。患者さんと一緒に治験のスケジュールを決める業務をしているためです。治験を通して治療の過程を見ることもできます。

最後に

転職をしたい理由は人それぞれですが、1つ共通しているのは「転職を失敗させたくない」ということ。転職は何度も簡単にできるものではありません。なぜ自分が転職したいのか目的をはっきりさせて転職活動を行っていくことで、きっと良い条件の職場を見つけられます。

それに転職活動をしているのは自分1人ではなく、転職サイトのコンサルタントも一緒です。特に初めて転職する方は不安ばかりかもしれませんが、助けてくれる人がいつでも側にいることを忘れずに転職への１歩を進めていきましょう。