病院薬剤師の中にはドラッグストアへの転職を考えている方もいることでしょう。
ドラッグストアの利用経験がない方はいないと思いますので、転職後の大まかな仕事のイメージはつくはずです。
ですが、お客さんの立場から見たお店の様子はあくまで表面的なものであり、その裏にある内部事情までは確認することができません。
しかし、転職を成功させるにはこうした内部事情もよく把握したうえで応募することが不可欠となります。
そこで今回は、病院からドラッグストアへの転職を考えている薬剤師さんに向けて、ドラッグストア業界の事情や注意すべき点などについてお伝えしたいと思います。
病院薬剤師からドラッグストアに転職するのは難しい!?
病院薬剤師にはOTC業務の経験がない方が多いため、転職の難しさについて不安になる方もいることでしょう。
しかし結論から言うと、病院からドラッグストアへは比較的容易に転職することができます。
一般に病院での業務は高度な薬学的知識を必要とするため、ドラッグストアや調剤薬局で働く薬剤師と比べて病院薬剤師はワンランク上の存在として認識されています。
このため、たとえOTC業務が未経験だとしても、採用面接時には病院薬剤師としての経験が有利に働き、面接官にも好印象を与えることができるでしょう。
また、OTC薬の知識は、医療用医薬品に精通している病院薬剤師であれば比較的容易に身に着けることができるため、それほど心配する必要も無いと言えます。
加えて、現在はどこのドラッグストアも慢性的な薬剤師不足に悩まされており、常時、募集がかかっている状況にあります。
中には喉から手が出るほど薬剤師を欲しがっているドラッグストアもあり、未経験であっても薬剤師免許さえあれば採用してくれる場合も多々あります。
こうした状況を考慮すると、面接時によほど無理難題な要求を押し付けない限りは、病院薬剤師の経歴をもつ方が不採用になる確率は低いと言えます。
病院薬剤師からドラッグストアに転職したら収入はどうなる!?
ドラッグストアに転職すると収入がどう変化するかは大きな関心事項だと思います。
一般に病院薬剤師の年収は400~650万円、ドラッグストアは500~800万円と言われており、ドラッグストアの方が高めの傾向にあります。このため、ほとんどの方は転職によって給与アップが見込めることでしょう。
ただし、ドラッグストアの中には前職の給与を考慮しながら初任給を決めるというところもあります。
こうしたケースでは、病院での給与額が極端に低い人だと足元を見られてしまい、相場以下の初任給に設定されてしまうといった事態にもなりかねないため注意が必要と言えます。
病院薬剤師からドラッグストアに転職したら仕事内容はどう変わる??
病院からドラッグストアに転職したときに最も劇的に変わるものは仕事内容でしょう。
同じ薬剤師の仕事であっても、病院とドラッグストアでは内容にかなりの差があるため、慣れるまでに苦労される方も多いかと思います。
病院で働く薬剤師は医療スタッフの一員であり、患者さんの命や健康を守るために身を挺して働くという高い使命感を持たれている方が多いです。
これに対してドラッグストアの薬剤師は商売人としての側面が強く、売上をアップさせて会社に利益をもたらすことを第一の目的として考えなければならない立場にあります。
今まで医療人としての誇りを持って仕事に取り組んできた病院薬剤師の中には、転職後にこうしたギャップに苦しまれる方も少なくないことでしょう。
また、ドラッグストアでの薬剤師の仕事は医薬品の販売や品出し、接客業務がメインになりますが、それだけとは限りません。
一般にドラッグストアは多忙であるため、人員が不足している店舗では薬剤師にも薬とは全く関係のない雑用が回されます。
最近のドラッグストアは食料品や日用雑貨など様々な商品を扱っているところが多いため、薬剤師がティッシュペーパーの品出しをしたり、重い飲料水のケースを運ばされたりするといった光景も珍しくありません。
また、お店によっては四六時中「いらっしゃいませ~!」「今日は〇〇がお買い得なので是非ご覧くださ~い!!」などと大声を出してお客さんの呼び込みをしなければならないところもあります。
病院の調剤室や無菌製剤室などの静かな環境での業務に慣れていた薬剤師にとっては、こうした呼び込み業務が苦痛になることも多いです。
このように、ドラッグストアの仕事は病院のような高度な専門知識を駆使するプロフェッショナルな仕事とはかけ離れており、給与などの待遇面にだけ惹かれて転職してしまうと仕事内容に大きく失望し、すぐに退職してしまうという事態にもなりかねません。
そうならないためにも、事前に身近なドラッグストアで働く薬剤師の姿を見学し、自分が実際に働く姿と重ね合わせてみることが大切と言えるでしょう。
病院薬剤師からドラッグストアに転職たら勤務パターンはどう変化する??
病院からドラッグストアに転職すると、勤務パターンも大きく変わることが予想されます。特に休日の曜日には注意が必要です。
一般に、ドラッグストアは年中無休でオープンしている店舗がほとんどです。病院勤めの場合は土日や祝日が休日になるパターンが多いですが、ドラッグストアではこれらの日は売り上げが最も高くなるため、薬剤師も出勤を命じられることがほとんどです。
また、病院勤めの場合はゴールデンウィーク、お盆、年末年始などは長期の休みをとれる場合が多いですが、ドラッグストアは基本的に年中無休のため、そうもいきません。
これらの時期は通常、パートタイムの薬剤師に優先的に休みを取らせるため、正社員の薬剤師はほぼ強制的に出勤させられることは覚悟しておく必要があるでしょう。
盆暮れ正月には田舎に帰るのが恒例行事になっているなどという人は、事前に転職先のドラッグストアの休暇取得状況を良く確認しておくようにしましょう。
まとめ
このように、病院とドラッグストアでは勤務条件や業務内容に大きな違いがあることがお分かりいただけたことと思います。
給与の高さだけに魅かれて安易に転職してしまうと、後々激しく後悔することにもなりかねません。
転職に際しては、身近にあるドラッグストアの店舗を買い物ついでに回って比較してみる、病院薬剤師をしながら週1日だけドラッグストアでダブルワークをして仕事に対する適性を確認してみるなど、入念な事前リサーチをするようにしましょう。
ご自身のライフスタイルや転職後の業務内容などを良く考慮したうえで慎重に判断し、是非とも悔いの残らない転職を実現するようにしてください。