医薬分業とは

医薬分業というのは、簡単に言えば「院外処方」のことです。医療と薬剤を分業する、つまりは医者が診察や治療を行った際、病院で薬を処方せずに処方箋を発行し、最寄の調剤薬局で調剤し、患者さんに薬を出すことを言います。

これは医者と薬剤師それぞれの専門性をいかんなく発揮して医療の質を高めようとしているものです。

医薬分業の歴史

明治時代当初にまで遡る

医薬分業の歴史は、明治時代当初にまで遡ります。当時は、ドイツが最も医療制度の進んでいた国でした。そんなドイツの医療制度を輸入してこようと、明治政府はドイツ軍の医師を教師として招き入れます。

「薬剤師を何と呼ぶかもわからず、調剤は無茶苦茶であった。棚の薬びんにはラベルがほとんどなく、8貼ってあったとしても、書いてある薬品名はでたらめであった」

当時のドイツ軍医師はそのように日本の医療を嘆いたそうです。そこで、医療は医師と薬剤師ふたり居て成り立つものなのだということを説き、薬学教育を推し進めます。それを受けて1874年に医制というものが制定されるのです。

そこには医師は薬を調剤せずに処方箋を発行し、調剤は薬剤師が行うものだということが書かれています。これが医薬分業の考え方の始まりです。厳密には、現在の医薬分業の形(薬局での院外処方)が行われていたわけではありませんが、本来の意味での「医療」と「薬剤」が分業したのがこのときです。

医薬分業化は進んでいる

現在でも医薬分業化は進んでいます。完全分業化ができていないところもありますが、多くの病院が完全分業化し、院外処方を積極的に行うようにしているのです。明治時代に生まれた考え方ですが、まだ完全には実施されていないと言えます。

2012年度は医薬分業率が66.1%に達したそうです。そうは言ってもまだまだ30%近くは完全分業化されていません。現在でも、医薬分業化は日本の医療制度の課題として取り組まれているのです。

医薬分業のメリットとデメリット

医療機関目線のメリット

医療機関の目線・患者さんの目線がありますが、まずは医療機関の目線でメリットについて見ていきましょう。医療機関側の目線に立ったとき、最も大きなメリットは「医師が診察・治療に専念できる」という点です。

薬剤師が薬を調剤することによって、医者が調剤するよりも安全に薬を使用することもできます。薬の専門家が調剤し、薬の専門家が薬の説明をすることで、患者さんに安心感を与えることもできる。薬の情報を薬局に保管することで、より安全に的確に患者さんにあった調剤をすることもできるというメリットがあるのです。

患者さん目線のメリット

患者さん目線でのメリットとして考えられるものは、まず「どこの薬局に行っても自由」だということです。基本的には最寄の薬局に行くかと思いますが、長時間待たされるような場合は翌日または違う薬局に持っていっても良い。つまりは待たされる負担が減るということになります。

旅行先でも処方箋さえあればそのとおりに処方してもらえるというのは、とても便利なものです。

また、院内調剤の時代とは違って、薬の説明を薬剤師からきっちりと受けることができるようになりました。飲み合わせの確認などもしてもらえるため、安心して安全に薬を服用することができます。サービスの質が向上したというメリットがあるわけです。

また、ジェネリック医薬品の使用などで患者さんの選択肢が増えたということもメリットに挙げられるでしょう。

患者さん目線のデメリット

医療側目線でのデメリットは、ほとんどありません。問題なのは患者さん目線でのデメリットです。患者さんからしたら、医薬分業なんてわかりませんから、「薬局へ行くのは二度手間」だと思う人が多いです。

ただでさえ病気で辛いのにもかかわらず、また違う場所に行かなければならないというのは患者さんにとって大きな負担でしょう。また、病院の医薬品ではないということで心理的不安を感じる人もいるようです。

また、調剤料がかかるため、余計にコストがかかります。薬剤師が調剤をするための人件費である調剤料がかかっているため、病院で処方するよりもコストがかかるのです。また、二度お金を払うということでも「コストが余計にかかる」と思う人もいます。

そういったことが、医薬分業のデメリットです。