薬剤師が患者さんと接する時間は、決して長くはありません。患者さんが薬局に来局してから退店するまで、短い場合には10分ほどで終わってしまいます。その短い時間の中でも、患者さんとコミュニケーションが取れるのはほぼ投薬時の服薬指導に限られています。

短い時間の中で、的確に情報を得て、的確に情報を与えることは容易ではありません。服薬指導時に気を付けたいことについて確認してみましょう。

服薬指導で求められること

薬剤師が行っている服薬指導とは、ただ薬を手渡すだけではありません。それでいいなら国家資格など必要なく、自動販売機に任せた方が効率が良いのですから。患者さんと対面することで得られる情報をもとに薬学的な管理を行い、患者の理解度に応じて治療に関する説明を調節することが必要です。

医師の目の届かない部分をフォローし、医療の最後の関門として、患者に適切な医療を提供することが求められているのです。

患者さんの理解度に応じて説明の内容を調節する

同じ治療を行っている患者さんであっても、その理解度には天と地ほどの差があります。非常に深い知識を持っている方もいれば、何のために治療をしているのかですら理解していない方もいます。それぞれの理解度に応じて、こちらの会話も調節しなければなりません。

治療の必要性について理解していない人に、きちんと服薬するようにと頭ごなしに行ったところで、全く意味はないのです。深い知識を持っている方なら薬剤師がフォローするだけで感覚で、治療に関して理解していない方には薬剤師が引っ張り上げる感覚で。その都度柔軟に対応していきましょう。

医師の処方意図を理解して患者さんとの緩衝材となる

医師は非常に多忙であり、一人の患者さんに対して満足に時間を取れないこともあります。治療の方針について患者さんがきちんと理解できているのなら良いですが、中には医師の説明がまだ理解できていないまま、治療をスタートしてしまう場合もあるのです。

そうなった場合には、なぜ自分が治療しているのか、いったいどんな治療をしているのか理解しておらず、その結果治療に関してマイナスのイメージを持ってしまうのです。そういった患者さんに医師の処方意図を薬剤師がかみ砕いて伝えてあげることができれば、医師と患者さんの中を取り持って、より良い医療とすることができるでしょう。

日々の生活などの注意を促す

治療に関することは病院でも説明は受けていますが、日々の生活での小さな注意点などまでフォローできているかというと、そうでない場合もあります。病院は多忙で、次から次にやってくる患者さんの対応で追われています。

薬剤師の服薬指導は薬を説明することも重要ですが、トータルケアとして他業種の不足分を補っていくべきではないでしょうか。日常的に行うと効果的な運動や、治療効果を最大に発揮していくための食事など、薬学的な知識を用いてアドバイスしてあげてはどうでしょうか。

患者さんの意向をくみ取る

薬局に来る患者さんのすべてが、薬剤師に関して肯定的ではありません。中には話しかけるだけで憤慨される方もいらっしゃいます。そんな中でも安全に医薬品を使用してもらい、適切な治療を受けていただかなければなりません。ただ説明するだけではなく、要点に絞って語り掛け、少しずつ患者さんとの距離を詰めていくべきです。

信頼関係を結ぶことに重点を置いた服薬指導も、立派な指導。あきらめず、見捨てず、接していきましょう。

服薬指導は薬剤師と患者を繋ぐ橋

ただ毎日の業務として服薬指導を続けるのではなく、患者さんとの関係を構築するための手段として、薬剤師の職能を発揮するためのツールとして、様々な形で服薬指導は存在します。

患者さんと薬剤師を繋ぐのは、医薬品ではなく人間としての関係です。服薬指導をうまく活用して、より良い医療の提供を目指しましょう。