調剤薬局では医師が発行する処方箋に基づいて調剤をするのは周知の事実です。当然調剤過誤を起こさないように細心の注意を払って薬剤師は仕事をしています。
ですが、どんなに対策をしていても極稀に調剤過誤は発生してしまいます。人間が仕事をしているので当然のことだとは思いますが、これは薬剤師だけに責任があることなのでしょうか。
もちろん、国家資格をもっているのですから責任はありますし、その責任から逃れようとはどの薬剤師も考えていません。それでも、明らかに処方箋として問題のあるものが紛れ込んでいるのも事実としてあるのです。この調剤過誤を引き起こしかねない危険な処方箋を見てみましょう。
達筆な先生の手書き処方箋
昨今は病院も電子化が進み、ほとんど手書きの処方箋を見ることはなくなりました。ですがだからこそ、手書きの処方箋に遭遇した時には注意が必要です。
在宅医療の医師が定時処方に臨時処方を追加したい時には、印刷してあった処方箋に臨時処方のみ手書きしてくることもありますし、地方の病院ですと処方箋のフォントのみ印刷してあり、処方欄は手書きというものもあります。印刷された読みやすい字に慣れた薬剤師には難易度が高い処方箋になるわけです。
手書きの方法も医師によって異なり、きちんと日本語で書いてくれるならまだしも、英語やドイツ語、略字を駆使してくることもあります。
この処方箋に遭遇した時のポイントは、自己判断で勝手に予想しないことです。不明なところがある処方箋は疑義紹介してからでなければ調剤できないのは当たり前のことですよね。
病院に聞きづらい場合には、門前の薬局に知恵を貸していただくのも有効な手段です。慌てずに確認作業をすれば、勘違いによるミスを未然に防ぐことができます。
似た商品名がある医薬品が載っている処方箋
パソコンの普及に伴って処方箋は印刷されることになり、非常にわかりやすくなりました。調剤時の負担も大きく減りましたが、逆にこのパソコンを使用することによって起きてしまった過誤もあります。医薬品を検索する場合に似た名前のものがあると、誤ってそちらが選択されてしまうことが発生したのです。
有名なものですとノルバスク錠とノルバデックス錠があります。頭文字三文字検索することでこの二種類が選択画面に出てきてしまうのです。現在は発売元の会社から注意喚起の文も出ていますが、似たような事例があるかもしれません。
細かな剤形・規格・用量が設定してある処方箋
同じ医薬品でも様々な剤形・規格が用意されている場合があります。微調整が必要な医薬品に多く見られますが、これも処方箋を思い込みで見ていると、自分の慣れ親しんだ剤形・規格で調剤してしまうことがあります。そうならないように複数の剤形・規格がある医薬品の処方箋は気を付けなければいけません。
ですが、単純に気を付けるといっても、そもそもその剤形・規格を知らないからこそ間違えてしまうわけですね。いかに薬剤師といえども、この世に存在しているすべての医薬品を暗記できているわけではありません。だからといって処方箋にあるすべての医薬品を調べているわけにもいきませんね。
処方箋にある剤形・規格に印をつけるなりして、処方箋に相違なく用意ができているかを判断するだけでも過誤の防止になります。ちょっとした手間ですが、お試しください。
おわりに
さて今回の記事では極端な例として紹介していますが、そこまでひどくなくても類似した危険な処方箋は存在していることと思います。この記事に触れたことにより、調剤過誤の発生が少しでも減少できれば幸いです。
薬剤師として、処方箋を信じるのではなくすべて疑うつもりで監査していきましょう。