調剤薬局に求められる仕事は、年々多様化しています。処方箋に応じて間違いなく調剤していればいい時代は終わったといっても過言ではありません。今後の薬剤師は、いかに患者を自分のファンとして取り込むことができるかが重要になります。
調剤報酬に見る薬剤師像
平成28年度の調剤報酬改定で新規に作られた算定要件に「かかりつけ薬剤師指導料」などの項目があります。今までは概念としてのみ存在していたかかりつけ薬剤師が、点数を伴った存在になったのです。
かかりつけ薬剤師としての点数を算定するには、さまざまな条件をクリアしなければなりません。かかりつけ薬剤師となるには下記の条件を満たしていることが求められます。
・薬剤師として3年以上の薬局勤務経験があり、同一の保険薬局に週32時間以上勤務しているとともに、当該保険薬局に半年以上在籍していること。
・薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得していること。
・医療に係る地域活動の取組に参画していること
さらに、かかりつけ薬剤師は薬局側が勝手にできるものではありません。患者からの同意を文書で得なければいけません。点数が発生するということは、患者側からすれば追加料金が発生してしまうということです。ですので、追加料金を払ったとしても良いと思われる薬剤師になることが必要となります。
患者の心を掴まなければいけない
患者が薬局に求めていることは何でしょうか。最低限度の条件として、間違いなく調剤ができていること。その次に迅速な投薬が求められ、薬剤師のお話(服薬指導)はさらにその次に来るものです。いつも同じような話しかされない服薬指導に飽きている患者を、自分のファンにするというのはとても難しいと思いませんか?
患者の心を掴まなければ、かかりつけ薬剤師の同意は得られません。では、どうすればよいのでしょうか。必要になるのは短い時間で人の心を掴むコミュニケーションスキルです。数分しか取ることのできない投薬時間で、いかに自分の魅力を伝えていくかがカギになります。
まずは自分の魅力がどこにあるのかを理解しておかなければいけません。話しやすい雰囲気を作るのが得意であるとか、医薬品に関する知識では他の薬剤師の追随を許さないですとか、サプリメントを使いこなすのが得意であるとか、なんでも良いのです。まずは自分にとって売りにできる部分を把握しましょう。
次に、その自分の魅力はどの層の患者に向いているのか考えてみてください。例えば、高齢の女性が患者として来局したとしましょう。いままでの記録から一人暮らしであり、あまり病識をもっていないことがわかっています。この患者さんに高度な医薬品の知識を披露したとして、すぐに理解してもらえるでしょうか。多くの場合、たくさんの時間を必要としてしまうことが予想されます。逆に、話しやすい雰囲気で対応してくれる優しい薬剤師さんであれば、日ごろの話題なども織り交ぜて詳しい会話をすることができるでしょう。患者がわかる範囲の病気や治療の説明をし、わからないところはフォローしてくれる。そんな薬剤師であれば、来局のたびに指名したくなってくるのではないでしょうか。
気難しく知識も豊富な患者さんであれば、そのような話しやすさは求めていないことが多いと考えられます。そういった患者さんであれば、まだ得ていない知識を与えてくれる薬剤師の対応を求めることでしょう。今後の治療に関して、深い知識と洞察で回答をくれる相談役となれる薬剤師がいるのなら、常にその薬剤師に対応してほしいと考えるでしょう。
ファンになってくれる人を見極めましょう
万人から好かれることが真の理想ですが、十人十色の世界ですべての人に好かれるというのは夢物語です。そういった努力をすること自体が八方美人だと揶揄する風潮さえあります。まずは自分の魅力を最大限に発揮し、その魅力を理解してくれる患者をファンとして取り込みましょう。