調剤薬局への転職を漠然と考えている方は多いと思います。
しかし給与などの待遇面だけで就職先を選ぶと、後悔することがあります。というのは、薬局が主に応需している医療機関の種類によって、職場環境などが若干変わってくるからです。
そこで、今回は総合病院の門前薬局の特徴と求人選びのポイントを解説したいと思います。
総合病院の門前薬局で働く薬剤師の職場環境・待遇
処方せん枚数が多いので薬剤師も多め
総合病院の門前薬局では、よほど立地が悪くない限り毎日大量の処方せんを受け付けることになります。また、一包化や錠剤の粉砕など処方内容が煩雑なものも少なくありません。
これらに対応するため、薬剤師の人数は処方せん枚数に対して多めになっている場合が多いです。
調剤設備が充実している
総合病院の門前薬局では、患者さんの待ち時間を減らすために調剤設備が充実していることが多いです。
私がかつて勤務した薬局は、1日の処方せん枚数が200枚を超えることもある門前薬局だったのですが、散剤錠剤分包機が2台、全自動錠剤分包機が1台、軟膏調剤機が1台設置されていました。
その後に異動となった門前薬局では1日の処方せん枚数が60~80枚だったのですが、やはり散剤錠剤分包機が2台、全自動錠剤分包機が1台設置されていました。
機器の操作に苦手意識のある方もいるかもしれませんが、数週間もあれば一通りの操作は覚えることができますので心配はありません。
あらゆる科目を受け付けるので勉強が大変
総合病院の門前薬局では多科目の処方せんを受け付けるので、非常に勉強になります。
もっとも、就職直後はとても大変です。添付文書や医薬品集などで積極的に知識を蓄積し、わからないことは先輩薬剤師にどんどん聞かなければ、いざ服薬指導をすることになっても何も話せません。
特に高齢の患者さんは多科目受診をしている方が多いので、様々な疾患と服用している薬剤について科をまたいだマルチな対応を求められます。
休日は多め、完全週休二日制の場合もある
公立病院は土日祝日休みであることが多いため、門前薬局もそれに合わせて完全週休二日制となっていることが多いです。
しかし、お盆休みがないことが多いので、帰省などを予定している人は他の従業員との調整が必要となります。
年末年始は御用納めの12月28日まで診察があって、仕事始めの1月4日から診察が始まる場合がほとんどなので、薬局も1週間近く休みになることが多いです。
一方、民間病院の場合は土曜日の午前中にも診察を行うことがあります。このような場合、完全週休二日制を望むのは難しいかもしれません。
ただ、公立病院と違ってお盆や創立記念日が休診となる病院もあるので、休日日数は比較的多めです。
受付終了時間が比較的早め
多くの総合病院では、受付が17時~18時に終了します。患者さんも受付終了時間ギリギリに来る方は少ないので、門前薬局も比較的早い時間に閉店できることが多いです。
未記入の薬歴がなく、後片付けや掃除が終わっていれば、閉店直後に業務を終了することもできます。
当直がある可能性も
門前薬局では、休日夜間の当直を医療機関から求められることもあります。
とはいえ、門前薬局はたいてい複数あるので、当番制で当直業務を行います。門前薬局が多ければ年に数回で済みますが、門前薬局が少ないと毎月のように当直当番が回ってきます。
総合病院の門前薬局の薬剤師求人を選ぶときにチェックするべきポイント
職場訪問で雰囲気をチェック!
総合病院の門前薬局ではとにかく人手が必要なので、薬剤師も事務さんも多めです。そのため、人間関係に悩む人もいるようです。
人間関係の悪い職場はやはり居心地が悪いですし、患者さんにもそれなりに伝わります。こういった職場を避けるためには、職場訪問をするのが一番だと思います。
職場訪問の際には、事前に許可を取りましょう。できれば、受付時間中の患者さんが少ない時間帯を希望するのがおすすめです。
比較的リラックスしている時間に訪問すればそこで働いている人たちの素に近い状態を見ることができますし、薬局の雰囲気も肌で感じることができますよ。
未経験者を受け入れる余裕があるか
総合病院の門前薬局は、非常に忙しい職場です。「未経験者可」となっていても、受け入れ体制が十分でないこともあります。
受け入れ体制が十分でない場合、ひたすらピッキングのみをさせられたり、逆にいきなり服薬指導をするように指示されることがあります。
未経験者のための研修をしっかり行っている大手の薬局に就職すればそういった不安はありませんが、残念ながらそういった薬局は数が限られています。
そこで、面接時あるいは職場訪問時に自分の指導を担当してくれる予定の薬剤師の有無を確認すると良いでしょう。
指導薬剤師が決まっているならば、受入準備があるということですので安心して就職できます。
勉強会は充実しているか
総合病院が新規薬剤を採用すると、それに連動して門前薬局でも勉強会が開かれることが多いです。
こういった勉強会は、業務に密接に関連した内容を学べることが多く、服薬指導にも非常に役に立ちます。
一方で、メーカーから勉強会の提案があっても「人が集まらないから」「時間外になってしまうから」などの理由で断ってしまう薬局もあります。
このような薬局では、該当の薬剤が処方されても知識不足のために服薬指導が十分にできなかったり、最悪の場合調剤過誤を起こしてしまう可能性があります。
就職活動時に勉強会の有無まで確認するのは難しいかもしれませんが、可能ならば確認してみましょう。
休暇や当直の有無を確認
休日は総合病院の休診日に準じて設定されますが、完全週休二日制かどうか、夏季休暇や年末年始の休暇がどのようになっているのかは確認すべきでしょう。
総合病院が土日祝日休みなので薬局も同じだろうと思っていても、当直勤務があることもあります。
就職してから「思っていたほど休みがなかった」と後悔するのはイヤなので、しっかりチェックしておきましょう。
残業時間は多くないか
処方せん枚数の多い日は薬歴が蓄積するので、残業が発生することもあります。
特に冬場は処方せん枚数が多くなる傾向があるので残業が発生しやすくなります。さらに、棚卸を受付終了後に行う薬局もあります。
そこで、残業がどの程度発生するのか、季節変動がないかといったこともチェックすべきでしょう。
まとめ
総合病院の門前薬局は、とにかく忙しいです。調剤未経験者の場合、服薬指導が滞りなくできるようになるまでには相当の努力が必要です。
しかし、比較的休みが多く他の形態の薬局に比べると働きやすい職場と言えます。また、多くの科目を受け付けるので知識がどんどん増えますし、調剤スキルもアップします。
つまり、覚悟は必要だけれど就職して損することのない職場と言えます。
私自身、総合病院門前薬局での勤務を経験したあとは、どんな薬局でも自信を持って業務に当たることができるようになりました。
総合病院の門前薬局はたいてい複数あるので、その中から自分の希望に最も沿う薬局を探すのも良いでしょう。
職場の雰囲気などもチェックし、後悔のない転職をしてくださいね。